1003(神戸・栄町通)重みのある上質空間に新刊と古本が5000冊
神戸・南京町のちょっと南。かつて神戸随一の金融街だったそうで、阪神・淡路大震災によって減ったとはいえ、重厚な近代建築がぽつりぽつり。そのひとつ、東方ビルの5階だ。
エレベーターを降りると、黒を基調とし、重みのある25坪ほどの上質空間が広がっていた。5000冊くらいある──と目算。
「ANNIE OAKLEY's GIRL」「ドロップぽろぽろ」「みちのく民話まんだら」。近頃私が“意識”していた、ジャンル違いの3冊を平台に見かけ、しめしめ。
でも、見たことも聞いたこともなかった「眼と雨と朝の傘」「おうちさよなら日記」もさっそくたばさむ。そして、左手に広がる古本棚で、昭和の「食」関係本など眺めて、店主・奥村千織さんの手が空くのを待つ。訪問したのは土曜の午後。実はかなり混んでいたのである。
やがて、「お待たせしてすみません」と、レジカウンターから出てきてくれ、「がらがらの日もあり、(来客は)読めないですね。11年前に始め、ここに移ってからでも6年になりますが」と。
京都府出身で、もともとは大学図書館の司書。芦屋川で「一箱古本市」を主宰したり、大阪のシェア本屋に棚を持ったりの時期を経ての本屋開業。
手持ちの本とせどりで始め、旅、民俗学、近代文学などの古本屋だったが、徐々に新本率が上がったのは、「置きたいジャンル」との兼ね合いだそう。「売れるだろう本」と「好きだから売りたい本」。どちらが多いのでしょう?
「同じくらい」と返した後、「“思い”としては、やっぱり『自分が好きだから売りたい本』ですね」。
食や旅、リトルプレスからジェンダーなど社会問題系までずらり
地元・神戸の本が集合した箇所あり、アナキズム、ジェンダーなど社会問題系の本がずらりの箇所あり。選び抜かれたであろう、100タイトルほどのZINEにも目がいっちゃう。
「終焉の人々」というZINEを手に取ると、「介護職だった方が、自分の働く老人ホームでのありさまを4コマ漫画にしたんです」と奥村さん。「市井のフェミニストの生を記録する」に目をとめると、「1990年代から2000年代にかけて行動してきた無名のフェミニストたちの聞き書きなんですね」。私など、2冊とも即買いである。
レジでPayPayしていると、同行カメラマンが「奥に積んでました。僕はこれを」とクリアファイルを持ってきた。ん? 洒落たデザインで、日本国憲法の全文が書かれている。「広島のデザイン事務所から仕入れたばかりです」と奥村さんの顔がほころんだ。
◆神戸市中央区栄町通1-1-9 東方ビル504号室/℡050-3692-1329/JR神戸線・阪神元町駅から徒歩6分/正午~午後7時、無休(年末年始のみ休み)
ウチの推し本
「神戸、書いてどうなるのか」安田 謙一著
「著者は、神戸で生まれ育った“ロック漫筆家”。私が、『この店と出会っていなかったら、本屋を始めなかっただろうな』と思う個人書店や、お好み焼き屋、バー、グリルなど飲食店、かつてあった映画館などが、見開きに1項目が収まる形で書かれています。単行本は2015年11月に『ぴあ』から。ウチが8月にプレオープンした当日、『もうすぐ出ます』と案内いただいたのもご縁を感じます」
(筑摩書房 968円)
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