「東京ホテル図鑑」遠藤慧著

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「東京ホテル図鑑」遠藤慧著

 東京と近郊の人気ホテルを水彩スケッチで紹介するビジュアル図鑑。

 かつて建築設計事務所でホテルの設計に携わった著者は、デザイン事例の勉強のためにさまざまなホテルに宿泊。その際に、いつもカバンに忍ばせている「コンベックス(金属製メジャー)」で、気に入った空間の寸法を測りスケッチに残すようになったという。

 やがてホテルの魅力にハマり、細かいディテールまで描いたり、アメニティーを測ったり、色見本をあてて色を確認するなど、次第にこだわりが出てきた。そうして出来上がったスケッチを集成したのが本書だ。

 2020年7月に宿泊した「HOTEL K5」は、その半年前に日本橋兜町にオープンしたばかりのホテル。とはいっても、その建物は100年前に建てられた元銀行で、重厚な建物の外観をそのままにリノベーションした複合施設の一部がホテルになっている。

 客室は、中心にベッドを据え、その周りを藍色のグラデーションが美しい円形のカーテンが囲むという斬新なレイアウト。

 その衝撃を伝えるためにまずは天井から鳥瞰した全体をスケッチ。さらにベッドと一体化した家具に置かれたレコードプレーヤーやバスルームの洗面台など、気になったものもスケッチ。実測されたスケールや使われている建材、素材などのデータも書き込まれている。

 ほかにも、カプセルホテル「ナインアワーズ赤坂・スリープラボ」などのミニマルホテルから、「帝国ホテル 東京」や「オークラ東京」などのラグジュアリーホテルまで、23のホテルを紹介。

 誰もがスマホを手に、片っ端から写真に収め、記録する時代だからこそ、手描きのスケッチには人の手のぬくもりと、こだわりが感じられ、つい見入ってしまう。

(学芸出版社 2750円)

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