「東京を旅する 異世界喫茶店めぐり」空想喫茶トラノコク著

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「東京を旅する 異世界喫茶店めぐり」空想喫茶トラノコク著

 ドアを開け、濃厚な香りが染み込んだ店内に足を踏み入れると、カウンターの中で店主が無心にコーヒーをドリップしている。インテリアや、静かに流れる音楽など店内のいたるところに店主のこだわりが見え隠れする、昭和の時代には当たり前にあったそんな喫茶店が、次々と姿を消している。

 本書は、チェーン店全盛の令和の時代にも昔ながらの喫茶店文化を保っている個性的な店を紹介するガイドブック。

 西荻窪駅から歩いて15分、マンションの2階にある「六ペンス」は、イギリスの童話が好きなオーナーが家具から小物までこだわって集めたインテリアが自慢。壁の色が部屋によって緑と赤に分けられ、緑の部屋はおひとりさま用の静かなスペース、赤の部屋はおしゃべりを楽しむ複数人数用のスペースだという。

 お隣、吉祥寺駅近くの「ゆりあぺむぺる」は、ライブハウスのオーナーたちが「自分たちが行きたいと思える場所を自分たちの手でつくろう」と昭和51(1976)年にオープン。不思議な店名は、宮沢賢治の詩からつけられているという。レトロでメルヘンチックな店内で飲む個性的な名前のクリームソーダが人気だそうだ。

 こうした「おとぎ話の世界へ」飛び込んだような非日常感に浸れる店をはじめ、横浜の「カフェ エリスマン」や八王子の「パペルブルグ」など「ヨーロッパ旅情」が味わえる店、京王線・仙川駅近くの「喫茶室 日々の泡」のように「隠れ家で自分の時間を」過ごすなど、6つのテーマで東京を中心に75店を紹介。

 喫茶店世代には久しく忘れていた豊かな時間を思い出させてくれる、若い世代には一周回って新鮮に感じられる店ばかり。きっとあなたのお気に入りとなる店が見つかるはず。 (KADOKAWA 1650円)

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