「グリーンランド」高橋美野梨編

公開日: 更新日:

「グリーンランド」高橋美野梨編

 日本の約6倍の面積を持ち、ほとんどが北極圏に位置するグリーンランドは、極東ロシアのチュコトカ半島から出発したアラスカやカナダのエスキモーたちの終着地であると同時に、北ヨーロッパから新たな地を求めて移動したノース人や18世紀に宣教師団となったデンマークやノルウェーの人々の目的地でもあった。

 本書は、これらの合流点として育まれたグリーンランドにおける人々の営みを、人類学、政治学、宗教学、文学などの知見をもとに描いた日本で初めての論集だ。

 人と自然が共生的に関係付けられるエスキモーの世界観と、自然を合理的にコントロールしようとする西洋の世界観の2つの混交といわれてきたグリーンランド。近年は、地球温暖化や資源などの視点から理系的視座で語られがちだったが、本書は人文科学の知見から浮き彫りにしているのが特徴だ。

 中世グリーンランドにおけるエスキモーとバイキングの接触、デンマークのグリーンランドの植民地化、先住民の世界観とキリスト教との習合、儀礼の変遷、エスキモー社会の物語と西洋の人魚文学などのテーマから、極北の島の本当の姿が見えてくる。

(藤原書店 3960円)



【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    2度不倫の山本モナ 年商40億円社長と結婚&引退の次は…

  2. 2

    日本ハムFA松本剛の「巨人入り」に2つの重圧…来季V逸なら“戦犯”リスクまで背負うことに

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    「ばけばけ」好演で株を上げた北川景子と“結婚”で失速気味の「ブギウギ」趣里の明暗クッキリ

  5. 5

    「存立危機事態」めぐり「台湾有事」に言及で日中対立激化…引くに引けない高市首相の自業自得

  1. 6

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  2. 7

    (2)「アルコールより危険な飲み物」とは…日本人の30%が脂肪肝

  3. 8

    西武・今井達也「今オフは何が何でもメジャーへ」…シーズン中からダダ洩れていた本音

  4. 9

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  5. 10

    高市政権の物価高対策はパクリばかりで“オリジナル”ゼロ…今さら「デフレ脱却宣言目指す」のア然