「なぜ市民は“座り込む”のか」安田浩一著

公開日: 更新日:

「なぜ市民は“座り込む”のか」安田浩一著

 米軍施設の7割が集中している沖縄では、いま、さらに辺野古新基地建設が行われている。工事車両の進入口ゲート前では、土砂運搬トラックが近づくたびに市民は路上に座り込み、体を張って反対を訴えているのだが、そんな彼らをちゃかして嘲笑する者がいる。

 その典型が、2ちゃんねるの創始者の「ひろゆき」だ。彼は、工事が終わった時間帯に辺野古を訪ね「座り込み抗議が誰も居なかったので、0日にした方がよくない?」というツイートを、〈新基地断念まで座り込み抗議 不屈 3011日〉と書かれた看板前でピースした写真とともに投稿した。これ以上基地をつくらないでほしいと抗議する人たちを、なぜこのような形で嘲笑するのか。

 著者は、このような人を見下した「笑い」に対して異議を唱える。正当な反論を封じ、孤立させ、相手に無力感を与える「笑い」の暴力は、強い者に意見を持つ者や、時に性被害者や従軍慰安婦、外国人にもふるわれてきた。

 本書では現地の肉声や歴史的事実を照らし合わせながら、他者を笑いとして消費する姿勢への疑問を提示。真剣に戦う者を笑うなと強く訴えている。

(朝日新聞出版 1870円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 4

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑

  3. 8

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  4. 9

    米国が「サナエノミクス」にNO! 日銀に「利上げするな」と圧力かける高市政権に強力牽制

  5. 10

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性