「なぜ市民は“座り込む”のか」安田浩一著

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「なぜ市民は“座り込む”のか」安田浩一著

 米軍施設の7割が集中している沖縄では、いま、さらに辺野古新基地建設が行われている。工事車両の進入口ゲート前では、土砂運搬トラックが近づくたびに市民は路上に座り込み、体を張って反対を訴えているのだが、そんな彼らをちゃかして嘲笑する者がいる。

 その典型が、2ちゃんねるの創始者の「ひろゆき」だ。彼は、工事が終わった時間帯に辺野古を訪ね「座り込み抗議が誰も居なかったので、0日にした方がよくない?」というツイートを、〈新基地断念まで座り込み抗議 不屈 3011日〉と書かれた看板前でピースした写真とともに投稿した。これ以上基地をつくらないでほしいと抗議する人たちを、なぜこのような形で嘲笑するのか。

 著者は、このような人を見下した「笑い」に対して異議を唱える。正当な反論を封じ、孤立させ、相手に無力感を与える「笑い」の暴力は、強い者に意見を持つ者や、時に性被害者や従軍慰安婦、外国人にもふるわれてきた。

 本書では現地の肉声や歴史的事実を照らし合わせながら、他者を笑いとして消費する姿勢への疑問を提示。真剣に戦う者を笑うなと強く訴えている。

(朝日新聞出版 1870円)

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