「マリエ」千早茜著

公開日: 更新日:

「マリエ」千早茜著

 物語は主人公の桐原まりえの離婚から始まる。40歳を目前に夫の森崎から「恋愛がしたい」と切り出され、最終的に承諾。理由には納得いかなかったが、まりえが感じるのは寂しさではなく、すがすがしさだった。

 離婚はしたが、まりえにはいくつもの人間関係があり一人ではない。大学時代のサークル仲間や、年上の女友達、馴染みの調香師……。まりえの離婚話を機に彼、彼女らが語る中でさまざまな恋愛観、結婚観に次第にまりえは自分の生き方に迷いが生じる。恋愛しないといけないのか、一人は寂しいのか……。

 そんな中、ひょんなことから7歳年下の由井君が、料理を習いに来るようになる。一緒にいて居心地がよい関係が逆に落ち着かなくなり、まりえは結婚相談所に登録。そこで紹介された無口な本田さんと出会う──。

 今年、「しろがねの葉」で第168回直木賞を受賞した著者の最新刊。著者と等身大の40代の女性を主人公に据え、大人の恋愛を描いた長編だ。

 婚活の場で切実な現実を突きつけられ、条件で選別される理不尽を経験しながら、まりえは自分の幸せとは何かを考えていく。迷いながらも前を向き進んでいこうとする姿に共感する読者は多いだろう。

(文藝春秋 1870円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 2

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  3. 3

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  4. 4

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  5. 5

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    今度は横山裕が全治2カ月のケガ…元TOKIO松岡昌宏も指摘「テレビ局こそコンプラ違反の温床」という闇の深度

  3. 8

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    大谷翔平のWBC二刀流実現は絶望的か…侍J首脳陣が恐れる過保護なドジャースからの「ホットライン」