「山本竜基」山本竜基著

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「山本竜基」山本竜基著

 気鋭のアーティストによる初の画集。

 手にした読者は、最初のページから度肝を抜かれるに違いない。「裸の自画像」とのタイトル通り、全裸の著者が、両手を高らかに上げ、世界に向かって自らを誇示している。

 その空にはおびただしい数の爆撃機が隊列を組んで飛翔し、自画像が踏みしめるのは一面の焼け野原だ。

 著者の解説によると「第二次世界大戦後の焼け野原の中、敗戦のトラウマを抱えながらも、ここで生きていこうと、正気を失いながらも歓喜のバンザイをしているつもりの絵」だそうだ。

 よく見ると表情はあくまでもにこやかで、状況とのアンバランスさが見る者の心を惑わす。そして、度肝を抜かれるのは、写真かと見紛うばかりのその描写の精緻さだ。

 ページが進むごとに描かれる人物が増殖。

「つくる人々」という作品では、裸の少年たちが校庭と思われる場所でなにやら地面を掘って作業をしている。それを囲んで見物する制服姿の少年たちも、すべて同じ顔をした自画像なのだ。

「無題(背中)」は、やはり全裸で頭を抱えて体を丸めて地面に突っ伏す男たちの背中が描かれる。紙に鉛筆で描かれた作品なのだが、その浮き出た背骨やあばら、耳の後ろの皺、足の裏の質感など、そのリアルさに目を見張らされる。

 ニートのような日々を送っていたときに描かれた「行方知らず」では、同じ人物がどこかに向かって歩かされている。全裸の彼らを急き立てるのも制服姿の同じ人物だ。

「不安を抱えたまま、心もとなく、ただ列の後ろについていっているだけの自分」を描いた作品だそうだが、その構成は尾形光琳の「燕子花図」などの過去の名作を参考に、さらに琳派風に「キメて描いた」のは、ふがいないさまをどこかで肯定したい思いがあったからかもしれないと振り返る。

 ページが進むと、そうした一連の自画像をテーマにした作品に続き、「天地図」や「天回図」など仏教画を想起させる作品へと移っていく。

 地獄を描いた「地獄図」や「混沌図」では、鬼たちのさまざまな責め苦を受ける人間がやはり自画像と同一人物。

「天地図」(書影)では、天上に浮かぶ円の中で仏に救いを求める衆生(もちろん自画像)が描かれ、その下では地獄の業火が燃え盛っている。その間には最終戦争のように仏の軍団と制服姿の自画像、さらに惑星を思わせる物体や得体のしれないキャラクターなど、言葉では描写が難しいさまざまなモチーフが、まさに著者の脳内からあふれ出てきたかのように極彩色で描かれる。

 ほかにも、コロナ禍で人間たちが右往左往する中、屋外で自由奔放にふるまう猫の存在の偉大さに気づき描いた作品や、自らのルーツを探るように両親をテーマにした作品など、これまでの画業を一望。

 その作品の放つエネルギーにただただ圧倒される。 (求龍堂 3300円)

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