「暗い引力」岩井圭也著

公開日: 更新日:

「暗い引力」岩井圭也著

 三島悠介は、中堅繊維メーカーに勤めるサラリーマン。妻・梨香と、家事や育児を分担しながら息子を育てている。朝に弱い梨香に代わって朝食を作り息子を保育園に連れていくのは悠介の担当で、掃除と保育園のお迎えは梨香が担当。洗濯や食器洗いは半々という具合だが、かなり協力的な夫なのではないかと自負していた。

 そんなある日、妻からスマホに「しばらく家には帰らない。わたしたち、別れた方がいいと思う」というメッセージが届き、驚愕する。身に覚えのない唐突な提案に動揺しながらも、今までの出来事を振り返るのだが……。(「僕はエスパーじゃない」)

 何かのきっかけで暗転する人間のダークサイドを描いた短編集。前記作以外に、妻に先立たれた老人が息子と対峙する「海の子」、経営者への不満から架空会社をつくった3人組に訪れる税務調査の話「捏造カンパニー」、借金取りに追い詰められた女が認知症を装う「極楽」を収録。

 また、不正を隠蔽する会社員と摘発者の攻防が描かれる「蟻の牙」、地方で一発逆転のチャンスを掴もうとする学芸員の話「堕ちる」まで、計6話のアンソロジー。

 (光文社 1980円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  2. 2

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  3. 3

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  4. 4

    片山さつき財務相の居直り開催を逆手に…高市首相「大臣規範」見直しで“パーティー解禁”の支離滅裂

  5. 5

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  1. 6

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  2. 7

    森田望智は苦節15年の苦労人 “ワキ毛の女王”経てブレーク…アラサーで「朝ドラ女優」抜擢のワケ

  3. 8

    臨時国会きょう閉会…維新「改革のセンターピン」定数削減頓挫、連立の“絶対条件”総崩れで手柄ゼロ

  4. 9

    阪神・佐藤輝明をドジャースが「囲い込み」か…山本由伸や朗希と関係深い広告代理店の影も見え隠れ

  5. 10

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲