「暗い引力」岩井圭也著

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「暗い引力」岩井圭也著

 三島悠介は、中堅繊維メーカーに勤めるサラリーマン。妻・梨香と、家事や育児を分担しながら息子を育てている。朝に弱い梨香に代わって朝食を作り息子を保育園に連れていくのは悠介の担当で、掃除と保育園のお迎えは梨香が担当。洗濯や食器洗いは半々という具合だが、かなり協力的な夫なのではないかと自負していた。

 そんなある日、妻からスマホに「しばらく家には帰らない。わたしたち、別れた方がいいと思う」というメッセージが届き、驚愕する。身に覚えのない唐突な提案に動揺しながらも、今までの出来事を振り返るのだが……。(「僕はエスパーじゃない」)

 何かのきっかけで暗転する人間のダークサイドを描いた短編集。前記作以外に、妻に先立たれた老人が息子と対峙する「海の子」、経営者への不満から架空会社をつくった3人組に訪れる税務調査の話「捏造カンパニー」、借金取りに追い詰められた女が認知症を装う「極楽」を収録。

 また、不正を隠蔽する会社員と摘発者の攻防が描かれる「蟻の牙」、地方で一発逆転のチャンスを掴もうとする学芸員の話「堕ちる」まで、計6話のアンソロジー。

 (光文社 1980円)

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