「月ぞ流るる」澤田瞳子著

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「月ぞ流るる」澤田瞳子著

 主人公は、かつて宮中で和歌の名手と言われていた朝児(赤染衛門)。長年連れ添った夫・大江匡衡を見送ったばかりということもあり、喪に服した生活を送っている。そんな折、宇治の妙悟尼から顕性寺で行われる法華八講に出かけないかとの誘いを受ける。当初断るつもりだったものの、紀伊ノ御の強い勧めもあり娘の小鶴と出かけることに。

 ところが当日、講説の最中に喧嘩騒ぎが起き、法会が混乱してしまう。仕方なく引き揚げようとした朝児だったが、強く引き留められ、実はこの誘いは朝児に権僧正の慶円と弟子の頼賢を会わせるためのものだったことが明かされる。

 聞けば、学者の家柄の大江家の門弟として頼賢を学ばせてほしいというのだ。なぜ夫亡き後息子・挙周ではなく自分にこのような依頼をするのかと訝る朝児に対して、慶円はその複雑な事情を話し始めるのだが……。

 本書は、日本初の女性による女性のための歴史物語「栄花物語」の作者・朝児から見た宮廷を描いた宮中小説。三条天皇の中宮の女房として仕えることになった赤児が目撃した平安貴族の政争や喜怒哀楽を鮮やかに描いている。

(文藝春秋 2200円)

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