「歌われなかった海賊へ」逢坂冬馬著

公開日: 更新日:

「歌われなかった海賊へ」逢坂冬馬著

 第2次世界大戦時のドイツ。16歳のヴェルナーは、幼い頃に母が病死し、父親はナチスを揶揄した夢を密告されたことでゲシュタポに逮捕され、死刑判決を受けて先日死刑になり、たったひとりになったばかり。

 居場所をなくした彼は、密告した男を殺そうとするが、その場に現れたエルフリーデという少女に邪魔される。彼女は、ヴェルナーに「君に会いたがっている人がいる」といい、「エーデルヴァイス海賊団」という小さな集まりに招く。それは、国民を一色に染めようとするナチ体制に反発し、大人の欺瞞にうんざりした少年少女の集まりだった。彼らの仲間となったヴェルナーは、市内に建設された線路の先に秘密にされている建物があることを知り、仲間と調べに行くのだが……。

同志少女よ、敵を撃て」で2022年に本屋大賞を受賞した著者による最新作。現代に生きる歴史教師が、ある老人から渡された冊子に記されていたナチ時代のドイツの話として物語は展開する。

 不正義を見て見ぬふりをした市民の行動が、結果どんな社会をつくるのか、今の時代につながる問題として考えさせられる。

(早川書房 2090円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • BOOKSのアクセスランキング

  1. 1

    日本の課題がわかる「リチウム戦争」アーネスト・シェイダー著/ニューズピックス(選者:佐藤優)

  2. 2

    天皇と戦争の世紀(1)岸信介外相の入閣に異を唱えた昭和天皇

  3. 3

    天皇と戦争の世紀(2)軍部の「大権干犯に当たらず」の説明に苛立ち

  4. 4

    皿書店(豪徳寺)「開高健も書いているし、食の本の店にしよう。そんな感じで」1年前にオープン

  5. 5

    「埋もれてきたもうひとつの抑留の真実と、日本政府の冷淡を知ってもらいたい」──「モンゴル抑留 見捨てられた死者たち」井手裕彦氏

  1. 6

    天皇と戦争の世紀(3)無条件降伏の後、日本側が天皇制をどう死守したのか

  2. 7

    「いのち、見つめて」夏川草介、渡辺淳一ほか著|看取りの真意を問いかける傑作医療小説集

  3. 8

    まだまだ暑い!酷暑を意識から追い出すミステリー本特集(2)「能面検事の挫折」中山七里著

  4. 9

    よみがえった写真が伝える戦前戦時下の“時代の空気”「AIとカラーでよみがえる戦争の昭和史」別冊宝島編集部編

  5. 10

    まだまだ暑い!酷暑を意識から追い出すミステリー本特集(3)「『石球城』殺人事件」北山猛邦著

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    北島三郎(3)「北島ファミリー」の長女・原田悠里が語る御大

  2. 2

    「マクドは健康保険と年金に加入できてよかった」 シニアが働き続けるために必要なこととは?

  3. 3

    徳川光圀(1)水戸黄門は全国漫遊などしていない 主に出かけたのは江戸と領地の往復

  4. 4

    東京・蒲田の2駅結ぶ蒲蒲線、大田区と地元を取材して分かった実現のハードルと地元の思い

  5. 5

    東京・大井町、OIMACHI TRACKSと対照的な東小路飲食店街、商店街理事長が直面する2つの問題

  1. 6

    NHK夏の音楽特番「うたであえたら」は北川景子のMCが見事 カオスと化した近年の紅白はお手本に

  2. 7

    「山口組」抗争指定解除へ、それでも対立は続く…6代目幹部「喜ぶのは早い」

  3. 8

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  4. 9

    止まらない高市首相SNS発信に官邸総動員の実態…この週末は3日間で11連投も「ゴキブリ」投稿で大炎上

  5. 10

    清水アキラさんが三男急死の直前に語っていた“せがれ”のこと 良太郎さんに口説かれものまねショー復帰