「歌わないキビタキ」梨木香歩著

公開日: 更新日:

「歌わないキビタキ」梨木香歩著

 木々の葉叢(はむら)の間にキビタキがいるのに気づいた。まだ南に渡らずにいる。歌わないキビタキは繁殖期の朗らかな様子とはまるで違って、重い鬱屈を胸に抱えているようだ。

 夜半に、ストーブ用の薪を運ぶとき、刺さったトゲをトゲ抜きで抜いていて、30年以上も前のことを思い出した。

 母とケンカをした夜、母が指にトゲを刺した。私は自分が母の心にトゲを刺したのだと直感し、焼いた針で時間をかけてトゲを抜いた。私はこだわりのある子どもだったが、母はそのこだわりを否定することが私のためになると信じているようだ。(表題作)

 八ケ岳の山小屋で四季折々の自然にふれて感じたことをつづったエッセー。

(毎日新聞出版 1980円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  4. 4

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  5. 5

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  1. 6

    巨人が助っ人左腕ケイ争奪戦に殴り込み…メジャー含む“四つ巴”のマネーゲーム勃発へ

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    支持率8割超でも選挙に勝てない「高市バブル」の落とし穴…保守王国の首長選で大差ボロ負けの異常事態

  4. 9

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 10

    和田アキ子が明かした「57年間給料制」の内訳と若手タレントたちが仰天した“特別待遇”列伝