「1947」長浦京著

公開日: 更新日:

「1947」長浦京著

 1947年10月。立川飛行場に着陸した特別機から、イアン・マイケル・アンダーソン英国陸軍中尉は日本の地に降り立った。彼の目的は、日本人に殺されたアンダーソン家の長男クリストファーの復讐を果たすため。

 クリストファーが戦地で日本人に斬首されたことに激高した父親から、当主の地位と財産の半分を継ぐ条件として、兄の命を奪った権藤と五味淵の死を見届け、死の証拠として体の一部を墓前に捧げることを命じられていたのだ。

 しかし、来日直後から、イアンは日本に漂う不思議な雰囲気に戸惑い始める。連合国として英国も米国と共に日本に勝利したはずが、日本は米国の領土のようであり、戦争責任がある人物も利用価値があれば米国の犬として活用されていたのだ。権藤と五味淵も日本占領政策の中で何者かがかくまっている気配があった。

 GHQ、ヤクザ、戦犯将校などの思惑に翻弄されて、イアンは目的を果たすことができるのか--。

 英国人の視点から、敗戦後の日本を描いたエンターテインメント小説。現代日本につながる、あざとい政治的駆け引きがスリリングに描かれている。

(光文社 2750円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも