「無限の正義」中村啓著

公開日: 更新日:

「無限の正義」中村啓著

 池袋署管内で、反社会勢力の構成員ばかりを狙った連続殺人事件が発生。箝口令が敷かれていたが、被害者の額には刃物で×印が刻まれていた。マスコミは犯人を“聖掃者”と名付け、池袋署刑事課強行犯係の警部補・薬師丸遼一も聖掃者の捜査に奔走する。

 4人目の被害者が出た翌夜のこと。遼一は娘の佳奈から、男を殴り殺してしまったとの電話を受ける。睡眠薬を飲まされレイプされそうになり、抵抗の際に鉄アレイで殴ったと……。遼一が駆け付けると、夕方に会ったばかりの闇金業を営む島田が死んでいた。バレエ留学を目前に控えた娘の将来を考え、遼一は隠蔽を決意。反社を狙った聖掃者の犯行に見せかけ死体を遺棄するが、その場面を聖掃者が目撃していた--。

 本書は、連続殺人事件を追う刑事が、「家族を守るため」に犯した罪から、悪のループにはまっていくノンストップエンターテインメント。

 捜査に携わりながらも、聖掃者から命じられ証拠隠滅、その聖掃者に遼一をゆする半グレ男の殺害を依頼するなど、気が付けば殺人犯と刑事は共犯の「相棒」関係に。そんな後戻りできない渦の中で、遼一は必死に出口を探っていく。

 いくつもの点と点が結び付き、事件が展開されていくさまは圧巻。果たして遼一の思惑通り事件は迷宮入りするか──。

(河出書房新社 1980円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    日吉マムシダニに轟いた錦織圭への歓声とタメ息…日本テニス協会はこれを新たな出発点にしてほしい

  5. 5

    巨人正捕手は岸田を筆頭に、甲斐と山瀬が争う構図…ほぼ“出番消失”小林誠司&大城卓三の末路

  1. 6

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  2. 7

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    「ばけばけ」苦戦は佐藤浩市の息子で3世俳優・寛一郎のパンチ力不足が一因