「ヨーロッパの大聖堂」ロルフ・トーマン編 アヒム・ベトノルツ写真 バルバラ・ボルンゲッサー文 忠平美幸訳

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「ヨーロッパの大聖堂」ロルフ・トーマン編 アヒム・ベトノルツ写真 バルバラ・ボルンゲッサー文 忠平美幸訳

 5年前のパリ・ノートル=ダム大聖堂の火災は、キリスト教徒ならずとも世界の多くの人に衝撃を与えた。一方、スペイン・バルセロナのサグラダ・ファミリア聖堂は、着工から140年以上を経た今も工事が続いている。

 世界の各都市に立つこうした大聖堂は、信仰のよりどころであるとともに、その街のシンボルであり、観光名所として、多くの人々を魅了してきた。

 その理由は、建設時の最高の技術を結集して造られた建物の美しさをはじめ、内外の装飾や彫刻、絵画、そして教会に不可欠なステンドグラスまで。すべてが計算し尽くされ、大聖堂そのものがひとつの芸術品だからだ。

 本書は、ヨーロッパの主な大聖堂を紹介する豪華ビジュアルガイド。

 スイスのバーゼル大聖堂の後期ロマネスク様式の赤色砂岩の建物は、この地に立つ3代目の教会堂。後期ゴシック様式の繊細な西塔と内部の彫刻は15世紀のものだが、建物の扉などには12世紀当時のものがそのまま使用されている。

 以降、繊細な工芸品のようなファサードが印象的なフランスのストラスブール大聖堂をはじめ、皇帝や国王が眠るドイツのシュパイアー大聖堂、そしてフレンチゴシック様式の究極の到達点で、東方三博士の聖遺物を納めるドイツのケルン大聖堂など、まずはヨーロッパの大動脈・ライン川沿いに立つ大聖堂を紹介。

 ほかにも、バルト海沿岸やフィレンツェからベネチアなどの地域ごとに、11カ国125都市に点在する主要な151の大聖堂、聖堂、教会、修道院を網羅する。

 どの建物も、写真から静謐(せいひつ)さと厳粛さが伝わってくる。俗世と離れ、神聖な空間にひたる貴重な読書体験をもたらしてくれるにちがいない。

(河出書房新社 5478円)

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