著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

100人の本屋さん(世田谷・松陰神社前)シェア型書店、コワーキングとイベントスペースの「人と人をつなぐ」本屋さん

公開日: 更新日:

 東急世田谷線・松陰神社前駅を降りて、10秒くらい。コンビニ右の階段を上がると、いい具合に散らかった空間が広がっていた。

「ここはいったいどんな場所?」などと書いた、説明会に使ったであろう紙をベタベタ貼ったボードあり。天井に“世田谷コミュニティー史”のような事項を手書きした紙あり。面白そうだ。

 128平方メートルをシェア型書店、コワーキングとイベントのスペースで3等分し、2021年にオープンした。

「経堂にあった、東京初のコワーキングスペースのユーザーだったんです。そこが閉店したのが残念で」と、店主の吉澤卓さん(50)。「じゃあ、僕がコワーキングスペースを作っちゃおう」に、シェア型書店などをくっつけたのは、本業の「人と人をつなぐ」コミュニティーデザイナー職のなせる業のよう。

「棚主さんの棚って、エネルギーを出すでしょう?」

 30センチ四方の棚が168個。「『たくさんの人』の意味を『100人』に託した」と、ユニークな店名に。棚主は、「読み終えた本を古本チェーンへ持って行くより、誰かに手渡したいと思う人たち」で、男女半々。社会科学系の本を置き、何らか一家言ありそうな40~60代が多いのが、この店ならでは。

「書店BAR銀座」さんがNHK「クローズアップ現代」を書籍化した「日朝極秘交渉」を、「スズキの棚」さんが世界銀行を描いた「国をつくるという仕事」を置いている、とメモメモ。

棚主トークは聞くほどに興味津々…

 取材中に現れた田沢貴さん(66)は中小企業診断士。最新のビジネス本のほか、得意のフレームワークを駆使して分析したという自著「なぜビートルズは60年経っても売れ続けるのか」を並べていらっしゃる。そして、「19時からのトークの応援者です」とにっこり。

 おっと、この日は10回目の「棚主トーク」の日だった。農水省出身でNPO法人「ユメソダテ」代表の棚主、前川哲弥さん(62)が、河出書房新社から知育コインケース付きの「ニコニコイン わくわくおかねワークブック」を発刊した、記念トーク。参加者10人ほど。では私も少しだけ聞いていこうと会場へ。

「知的障がい者」「認知の凹凸」がキーワードの話で、聞くほどに興味津々に。終了時までいてしまった。

◆世田谷区若林4-25-14 コーナー松陰2階/東急世田谷線松陰神社前駅からすぐ/12~17時、水・木曜休み/棚貸し料1カ月3850円(コワーキングスペースは24時間営業・無休)

ウチのベストセラー本

「良くしようとするのはやめたほうがよい」村田由夫著、寿青年連絡会議清算事業団豆の木がっこうを育てる会発行
ここでの新本売値 700円

「ドヤ街から、アルコール依存や登校拒否を通して、『生き方』を考える」が副タイトル。横浜のドヤ街、寿町で働く(執筆当時)著者が、アルコール依存症の人たちに接してきた経験を元にした本。

「社会福祉士の棚主『いてよし書店』さんが激推し。定価900円なのに、多分自腹を切って700円で売られています。なんと1992年の初版。30年以上も版を重ねているんですよ」(吉澤さん)

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