「増補新装版作字百景」グラフィック社編集部編

公開日: 更新日:

「増補新装版作字百景」グラフィック社編集部編

 さまざまなデザイナーによる「作字」作品を集めたアートブック。作字とは、巷にあふれるフォントやタイポグラフィーとは異なり、図形のように「描い」たり、筆記用具を使って「書い」た、「かく」ことによる文字を基調とした作品のこと。

 2000年代末以降、多くの若いデザイナーが「かく」こと、あるいは「かき文字」によるグラフィックの可能性に挑んでいるという。また、SNSにも多彩な作風の「作字」投稿がシェアされ、同好のネットワークが拡大されているそうだ。

 例えば、三重野龍氏による名古屋市東山動植物園開園80周年記念事業のイベントのフライヤー。

「タイトル植物園 熱帯植物の観察術」という文字が淡いパープルを基調とした下地にグリーンで描かれているのだが、その文字はそれぞれの文字がどこかしらで別の文字とつながっている。背景には格子状の枠が描かれており、金網に植物が絡みついているイメージを表現したものだという。

 かと思えば、同氏には利き腕とは逆の手、もしくは足指にペンを挟んで描いたのではないかと思えるほど、あえて稚拙なタッチの「作字」もある。

 佐々木俊氏の作品は、書の伝統を解体しデジタル風の文字で禅の言葉「窮而変々而通」を掛け軸に仕立てたもので、床の間に違和感なく収まり、和の室礼とも調和している。

 ほかにも、装飾体の欧文文字のように流れる線で日本語を描く「あらたかな」さんの作品や、「大至急」や「社外秘」などのビジネススタンプをアレンジして販売もしているオンラインショップ「こんなビジネス・スタンプは嫌だ」の作品、さらに家業でもある看板の文字を進化させた廣田碧(看太郎)氏の作品など。

 40組約800点もの作品に日本語表現の新たなる可能性を垣間見る。

(グラフィック社 3190円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本ハムが新庄監督の権限剥奪 フロント主導に逆戻りで有原航平・西川遥輝の獲得にも沈黙中

  2. 2

    白鵬のつくづくトホホな短慮ぶり 相撲協会は本気で「宮城野部屋再興」を考えていた 

  3. 3

    DeNA三浦監督まさかの退団劇の舞台裏 フロントの現場介入にウンザリ、「よく5年も我慢」の声

  4. 4

    藤川阪神の日本シリーズ敗戦の内幕 「こんなチームでは勝てませんよ!」会議室で怒声が響いた

  5. 5

    佳子さま“ギリシャフィーバー”束の間「婚約内定近し」の噂…スクープ合戦の火ブタが切られた

  1. 6

    半世紀前のこの国で夢のような音楽が本当につくられていた

  2. 7

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 8

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  4. 9

    田原俊彦「姉妹は塾なし」…苦しい家計を母が支えて山梨県立甲府工業高校土木科を無事卒業

  5. 10

    プロスカウトも把握 高校球界で横行するサイン盗みの実情