「更級忍法帖」荒山徹著
「更級忍法帖」荒山徹著
美濃・高須藩の江戸詰奥右筆を務める八枝崎頼母の娘、美緒は物語を読むのが好きで、同好の藩士の娘たちと「更級乙女組」と称して物語を楽しんでいた。
伝令の早馬が高須城に駆け込んだ夜、闇をつんざいて総登城を命じる太鼓が鳴り響く。高須藩は幕府に命じられた大坂城二の丸の普請工事の遅延をとがめられ、領地召し上げとなったのだ。なぜか共同工事の越中魚津藩はおとがめなしだという。
大坂にいた美緒の父は工事をめぐる刃傷沙汰で不慮の死を遂げ、母は下僕に殺された。途方に暮れる美緒に、剣術指南役の娘、冴は仇討ちを持ちかける。
改易ですべてを失い、妖術で復讐する武家の娘たちを描く時代小説。
(早川書房 2750円)