「誓いの簪」天羽恵著
「誓いの簪」天羽恵著
事情があって命を狙われているおりんは、西国から江戸に逃れてきて佐賀町の裏長屋に住み、私娼をして食いつないでいる。残暑の厳しい日、両国で同じ長屋に住むお園を見かけた。頭巾姿の女がお園を追っているのに気づき、後をつけると武家屋敷に入ってゆく。忍びを束ねる役目の木田能登守の屋敷だ。
寒風が吹く頃、おりんは下ノ橋から歩いてくるお園を見かけた。お園がつんのめって転んだとき、風を切る音がして矢が飛んできた。──私を狙っているのか? 続いて弦音が聞こえ、おりんがとっさに持っていたまんじゅうを投げると、1本の矢がそれに突き刺さった。
隣人を助けるために活躍する天涯孤独の少女を描く時代小説。
(徳間書店 1980円)