「グロリアソサエテ」朝井まかて著

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「グロリアソサエテ」朝井まかて著

 生まれてすぐに母を亡くし、関東大震災で父親も亡くしたサチは、遠縁の親戚を頼って大阪に避難したものの落ちつけず、転々とした末、同じく震災で京都に避難した一家の女中になった。学者先生のお宅と紹介された家だったが、サチの兄が傾倒していた「白樺」を創刊した宗教哲学者の柳宗悦の家だと知って仰天する。

 そんなある日、宗悦のもとに陶芸家の河井寛次郎と濱田庄司が来訪したことを契機に、サチは彼らが小道具市巡りをし始める様子を目撃する。サチが見たのは、日用品の中に美を見いだす「民藝」運動の始まりだった……。

 震災を契機に100年前の京都で起きた、民衆の工芸品に美を見いだす「民藝」の世界。本書は、そんな新しい美の世界を切り開いた人々の姿を、彼らの身近で生活した女中サチの視点から描いた歴史長編。審美眼の高い柳家で生活するなか、自らもその思想に感化されていくサチ。美や芸術を愛する人々の悩みや人間関係、どうにもならない経済問題など、一緒に生活しているからこそわかる人間らしい姿に接しつつ、自らの自立した生き方を模索するサチの姿も凛として美しい。

(KADOKAWA 2310円)


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