著者のコラム一覧
カモシダせぶん書店員芸人

1988年、神奈川県生まれ。お笑いコンビ「デンドロビーム」(松竹芸能)のメンバー。日本推理作家協会会員。現在、都内の書店でも働く現役の書店員芸人。著書に「探偵はパシられる」など。

「バーナード嬢曰く。」施川ユウキ著

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「バーナード嬢曰く。」施川ユウキ著

 私は書店で働いているぐらい本が好きだ。しかし時々自分は読書家なのか? と不安になってしまうこともある。自分より本を読んでる人も、同じ本でも深く読めてる人もいるし……そういう悩みにぶつかった時、そしてシンプルに良い本をたくさん知りたいなと思った時に私が読んでいるのがこのマンガだ。

 学校の図書室の常連生徒町田さわ子。彼女は「本はそんな読めてないけど、人から読書家だとは思われたい」という矛盾した欲求を持つ女の子で、同じく図書室の常連でSF小説マニアの神林しおりや、シャーロック・ホームズ好きの図書委員長谷川スミカの前で珍妙な「読書あるある」を披露して、突っ込まれるという流れになっていく。表紙はさわ子が夏目漱石の「夢十夜」を読み終わった後の感想なのだが、この時点で感想として変すぎる。

 もちろんギャグマンガとして面白いのだが、根っからの読書家がゆえに性格をこじらせていた神林が、純粋なさわ子に心をどんどん開いていく場面もあり、青春ものとしても上質な作りになっている。

 最新8巻では「モンテ・クリスト伯」やヒチコックが映画化した「鳥」、間宮改衣のデビュー作で三島由紀夫賞候補作になった「ここはすべての夜明けまえ」など、新旧、国内外問わずの良書が登場する。自分が普段読まないジャンルの良書もこのマンガで知れるのが助かる。

 童話「ブレーメンの音楽隊」を読んで涙を流したさわ子。この童話に泣ける要素なんかあったか? と思ったが、さわ子の視点になるほど……と思わされた。自分が読んだ本も別の人間を介すと別の感想になる。そこもこのマンガの楽しみと言えよう。

 電子書籍やオーディオブックなど変化した読書環境の話も読みごたえがあった。また、あるWEB小説を読んで感動した生徒が、その作者に感想をDMで送る話ではこちらも現代ならではの思いがけない展開と結末で胸に来る。

 我々の読書欲を刺激し、また本の読み方は人それぞれでいいんだと思わせてくれる名作マンガだ。別の巻で「ホームズはどこの話から読んでも良い」という名言があったが、このマンガもどの巻から読んでも楽しめる面白さなので書店で見かけたら最新刊しかなくてもぜひ買ってほしい。

(一迅社 814円)

【連載】書店員芸人カモシダせぶんの「いい本入ってますよ!」

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