あさのあつこ(作家)本書を開けば、その沈黙がどれほど罪であったかを知ることになります
9月×日 雨のち曇り
このところ、気が塞ぐことが多い。と、感じている方々はそれこそ多いのではないでしょうか。
なんかもう、本当に変! この国の政治も経済も確実に衰退しているとしか思えない。
と、あさのなどは鬱々として、それでも、何とか生きている状態です。自分がどう生きるかは、自分で答えを出すしかないけれど、国家とか世界とかが明らかに歪みも、堕落も、変質もしていくとき、その歪みや堕落や変質とどう向き合えばいいのか、途方に暮れます。
なので、今日は途方に暮れ、自分を見失いそうなとき読んだ1冊、読んでもらいたい1冊を紹介します。土山優著「アンネは、なぜ死んだのか」(新日本出版社 1980円)。
アンネとは、かの「アンネの日記」の作者、アンネ・フランクのことです。彼女の短い人生については今更語らずとも、よいでしょう。本書も、アンネの生きた軌跡を追ったものではありません。
アンネが生きた時代を多方向から、作者は探っていきます。凄いのは、作者土山優の軸足が、常に“今”、“現代”にあること。アンネを戦争の時代の悲劇として消費するのではなく、わたしたちが生きる今を穿つ存在としていること、です。
ナチズムに覆われた国々で人はどう生き、どう殺され、どう滅びていったか。あるいは、どう生き延び、何を遺そうとしたか。作者は執拗に、どこまでも執拗に探り続けていきます。執念というより怨念に近い凄みをわたしは感じ、怯みさえしました。怖い本です。
本書はヨーロッパ各地を巡る旅行記の雰囲気を漂わせながら、その裏に鋭い爪を隠し持ちます。
わたしたちの今、今のイスラエル、今の日本、今の世界、今のわたしたちを斬り裂く爪。
おまえは、どうすると問われ、わたしは黙り込みました。ナチの政権下、多くの人々が沈黙と無関心を選んだように。
本書を開けば、その沈黙がどれほど罪であったかを知ることになります。
恐ろしい、だからこそ2026年の今、読まねばならない1冊なのです。



















