原作ありきにも一石 映画「モンスターズ」は“規格外”だらけ
有名小説やヒット漫画を原作にした作品が乱立する昨今の映画界――。5月30日に封切られた映画「MONSTERZ モンスターズ」は、そんな傾向に一石を投じるかもしれない。
まなざしひとつで人を自由に操る力を持つ男(藤原竜也)と、それが唯一きかない男(山田孝之)の戦いを描いたSFアクションである。これから20年、30年と日本の映画界を背負って立つ存在になる若手実力派――藤原と山田のダブルキャストという気合の込めようだが、実は「超能力者」というマイナーな韓国映画をリメークした作品。本国では200万人以上を動員するヒット作だったが、日本では一昨年の春に公開されるも、さっぱり話題にならず……。〈マイナー韓国映画のリメーク〉となれば観賞意欲もイマイチ湧かないが、映画批評家の前田有一氏の評価は違う。
「アルフレド・ヒチコックも語っているのですが、本来、サスペンス映画の原作はマイナーな方がいいはずなんです。有名な原作は原作ファンの厳しい批判の目が向けられ、肝心のオチまで分かっていたりする。それでもメジャーな原作が多いのは、知名度が何より重視される風潮だから。マイナーな原作で挑んだ『モンスターズ』は、まさに型破りの意欲作。原作の知名度に頼ることなく、単純に映画俳優で客を呼べるかどうか。それが試される一本ともいえますが、プロ意識の高い役づくりに定評のある主演2人はその期待を裏切らない素晴らしい演技を見せている。監督はホラー映画の一時代を築いた中田秀夫監督。観客を驚かせることに秀でた方だけあって、今作もそういったサプライズが、シャワーシーン、襲撃シーンなどラストまでたんまり仕掛けられている。ピンで主役を張れる実力を持つ2人の俳優が、中田監督の意図を見事に具現化した“三位一体”の作品。見逃す手はないでしょう」