30分枠で全5回の緊迫感 ドラマ「She」に見た挑戦と企画
【連載コラム 「TV見るべきものは!!」】
たとえば、「ようこそ、わが家へ」(フジテレビ系)や「アイムホーム」(テレビ朝日系)を見ていて、ふと思う。これって全10回、つまり10時間を費やさないといけない話なんだろうかと。
池井戸潤の原作小説も石坂啓の原作漫画も、いわゆる大作ではない。むしろ一気読み可能な中編だ。それを全10回に仕立てる際の“水増し感”が気になるのだ。これが、もしも半分の全5回だったら、ドラマ全体がぐっと引き締まり、緊迫感も増していたはずだ。
実は先週末に最終回を迎えたNHKの土曜ドラマ「64(ロクヨン)」も、この「She」も全5回の放送だった。どちらも、ある謎を追うサスペンスドラマであり、最後まで見る側を“安心”させずに引っ張り続けていた。
「She」の舞台は高校だ。突然、学年一の美少女、あづさ(中条あやみ)が姿を消す。学校側は生徒から事情を聴くが、原因や行き先を知る者はいない。しかし、ジャーナリスト志望の涼子(松岡茉優)が真相を探るうち、あづさだけでなく、クラスメートたちの秘密も明らかになっていく。
高校生のリアルな距離感と関係性を見せた、松岡たちの好演。ドキュメンタリーのような手持ちカメラの映像。また、問題の当事者が不在のままの推理劇という点も挑戦的だった。30分枠で全5回のドラマ。こういう企画がもっと増えてもいい。(上智大学教授・碓井広義=メディア論)