著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

テレ東「家、ついて行ってイイですか?」が醸す絶妙な距離感

公開日: 更新日:

連載コラム「TV見るべきものは!!」】

 テレビ東京で放送中の「家、ついて行ってイイですか?」。「この番組は終電を逃した人に家を見せてもらうだけの番組です」と冒頭で宣言しているが、まさにその通りの内容だ。にもかかわらず、見始めたら最後まで目が離せない。

 番組は深夜の街角からスタートだ。終電が行ってしまった後、うろうろしている人たちに、スタッフが「タクシー代を払うので」と声をかける。OKが出たら家(部屋)までカメラが同行する。タレントでも有名人でもない“普通の人々”が、生活感満載の自室で語る“普通の人生”が、とても普通とは思えないほど面白い。これまで単発的に放送されていたが、この秋、堂々のレギュラー番組となった。

 先週登場したのは3人。相方との共同生活を続けながら、お笑い芸人を目指す28歳の男性。保育士を辞めてガールズバーで働く24歳の女性。そして映画監督の夢を抱きつつ、アパートの3畳間で暮らす31歳の男性である。

 中でも3歳から14年間を施設で過ごしたという3畳間監督の話は、淡々としているのに妙なリアリティーがあった。だが、番組はあまり踏み込まない。あくまでも、ちょっと家に寄らせてもらった通りすがりの位置にいる。この距離感がいいのだ。

 スタジオ代わりは、お邪魔した一般人の部屋。ビビる大木とおぎやはぎの矢作、そしてゲストがVTRを見ながら語り合う、ユル~い感想も深夜ならではの味わいだ。

(上智大学教授・碓井広義=メディア論)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋