著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

厳しいTV批判も 昼ドラ「やすらぎの郷」は倉本聰の総決算

公開日: 更新日:

 2008年に放送されたドラマ「風のガーデン」(フジテレビ系)。その脚本を書き上げた時、倉本聰は新聞などで「これが最後の連ドラになるかも」と語っていた。「質は考えず視聴率だけで評価する」テレビ局に憤っていたのだ。実際その後10年近く、倉本は連ドラを書いていない。

 視聴率だけで評価するテレビ局の目は、いつも若者層に向けられてきた。スポンサーが喜ぶ、消費と購入を繰り返してくれるからだ。一方、消費と購入が緩慢な高齢者は切り捨てられる。この層はずっと「見たいものがない」状態に置かれていた。「やすらぎの郷」は、高齢者による、高齢者のための、高齢者に向けたドラマだ。脚本の倉本が82歳。出演者も八千草薫(86)、有馬稲子(85)、浅丘ルリ子(76)、加賀まりこ(73)、そして主演の石坂浩二(75)と70~80代の役者が並ぶ。

 いずれも大物だが、若者狙いのドラマが氾濫する時代には、活躍の場が限られてしまう。しかし、その存在と演技には凡百の役者が及ばない本物感がある。過去への執着、病や死の恐怖、芸術や芸能への未練などの葛藤。この年代でなければ表現できない世界があるのだ。

 同時にこのドラマは倉本自身の総決算でもある。物語の中に厳しいテレビ批判や社会批判も入れ込んだ、「言いたいことは言っておく」ドラマだ。やはり目が離せない。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希の選手会脱退に「情けないし、寂しい」 球界に広がった“第2の朗希”への危機感

  2. 2

    (1)阿部監督の暴行事件は巨人にとって“渡りに船”だったか…異様に早い「解任判断」の裏側

  3. 3

    ドジャース大谷6年連続オールスタースタメンに暗雲…建国250周年の地元票が生む“フィリーズ包囲網”

  4. 4

    中傷動画疑惑に「ナメプ」連発の高市首相に大打撃! 共同通信の作成者証言報道を皮切りにメディア総攻撃開始

  5. 5

    「ペチュニア」と「キンギョソウ」が見頃を迎えた花と緑のテーマパーク「東京ドイツ村」入場券を5組10人にプレゼント

  1. 6

    セクシー女優・藤咲まいが「台湾売春」で逮捕 高額ギャラの裏側にある“ホスト沼”の存在

  2. 7

    「ベンチ裏で泣いた」佐々木朗希に囁かれたメジャー適応力への不安…野茂英雄との決定的な違い

  3. 8

    東京都内の選挙で自民また手痛い負け…「リベラル一掃を」と鼻息荒かった杉並区長選も暗い先行き

  4. 9

    佐々木朗希がゴネた末の契約合意 この時すでに米挑戦は“既定路線”になっていた

  5. 10

    高市首相の閉鎖ブログに残された「不都合な真実」…国会で大見得《過去に週刊誌を訴えた》は虚偽なのか?