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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

我らは何も反対できない とにかく、総裁選どころじゃない

公開日: 更新日:

 誰が自民党総裁をいてこまそうが知ったこっちゃない。いてこますとは「やってしまう」という河内大和ことばだが。しょせん、「押し出しトコロテン総裁」の「ケツ拭き内閣」だろが。我ら庶民は何も反対できないし、阻止もできない。今さら「美しい国、日本」なんていう痛い政治屋もいないだろうが、とにかく、こっちは総裁選どころじゃない。コロナのせいで、我が組の次回作の作業が止まってしまった。東京と地方で何千人も応募のあった出演者のオーディションも延期になったのだ。誰の指図でもない。3密だ、社会の距離だと世間の圧搾空気がそうさせたのだ。火事場のような撮影場でそんな「紳士協定」なんて誰が守り通せるものか。我が組の現場は百密、千密になって、皆が声張り上げてナンボだ。そんな上品な現場など考えられない。だから、世間に、自由が戻るまで延期したわけだ。

 今や、我らは映画難民だ。東京中が芸能難民であふれている。人の集まる現場がないと、芸能の民はたちまち、干上がってしまう。ほとんどの者に蓄え金はない。コツコツ貯めて通帳ばかり見てる役者なんか知らないし、宵越しの金もやっとの哀れな稼業だ。昔から「河原の乞食」とはよく言ったものだ(ちなみに、河原は芸の都、京都鴨川の河原をいうが)。芸能の民たちに、国や都はどこまで持続化給付金とやらを出したのか実は怪しい。宝クジみたいに100万もらった役者もいたが、申し込みが遅れてしまってダメだった助監督もいたぞ。

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