立川談志とダンカン誕生 すべては“池袋の夜”から始まった
クルクルクル~カラン、カラ~ン! ついに俺の人生ルーレットがその日に止まる時がやってきた。俺という人間、いや正しくは「ダンカン」という存在がこの世に誕生することとなる、あの1982年9月13日、38年前の池袋の夜から始まった物語を述べよう。
その時、俺の心臓はその場所、池袋演芸場の客席に入った途端にバクバクとまるで早鐘のように鼓動していたのを覚えている。その夜、池袋演芸場では「(立川)談志一門会」が催されていた。客席をギッシリと埋め尽くしたお客さんは次々と高座に登場する立川談志の弟子の噺家の落語に笑いと拍手を惜しみなく送っていたのだ。
その光景は緊張のデッドゾーンに入りっぱなしで、できることならこの場から駆け出してどこまでも逃げてしまいたいと全身が冷たい汗まみれになっている、決して冷静でない俺が見ても奇妙でしかなかったのだ。