テレ東「年忘れ」今や“裏紅白” 人気は昭和歌謡特化にあり

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 テレ東「年忘れ」は、"昭和の紅白歌合戦"と言えるかもしれない。

 2020年大晦日、「NHK紅白歌合戦」の世帯視聴率が第1部34.2%、第2部40.3%(ビデオリサーチ調べ/関東地区。以下同)を獲得し、年間視聴率でも1、2位となった。国民的人気番組の裏で、地上波で唯一同じ音楽番組の「第53回年忘れにっぽんの歌」(テレビ東京系)は7.4%だった。

 最近10年の「年忘れ」の視聴率推移を見ると、2011年の8.0%から2014年には5.8%まで下落したが、2017年には8.4%を記録。以降、7~8%台で落ち着いている。

■出演歌手の90%以上が紅白出場経験アリ

「年忘れ」は、時間帯も出演者も“裏紅白”の様相を呈している。調べてみると、20年の出演88組中80組が紅白出場経験を持ち、確率はなんと90.9%に上る【※特別枠の出演含む。「年忘れ」の畑中葉子×松尾雄治(元ラグビー日本代表)の「カナダからの手紙」は、松尾はあくまで本家・平尾昌晃の代役として考えて1ユニット。サンプラザ中野くん×パッパラー河合も1ユニットと数える。松平健&香取慎吾はこの日限定ユニットのため、別々にカウント。松平は個人、香取はSMAPで紅白出場歴あり】。

「年忘れ」の全89曲(「懐かし名場面」15曲、番組テーマソング「にっぽんの歌」を除く)の中で、最も歌唱された発売年のベストテンは以下になる【※年の横は、主な歌手名と曲名】。

1位タイ:5曲
昭和47(1972)年 美川憲一「さそり座の女」 郷ひろみ「男の子女の子」
昭和49(1974)年 ささきいさお「宇宙戦艦ヤマト」 中条きよし「うそ」
昭和50(1975)年 都はるみ「北の宿から」 岩崎宏美「ロマンス」
昭和52(1977)年 千昌夫「北国の春」 狩人「あずさ2号」
昭和54(1979)年 小林幸子「おもいで酒」 八代亜紀「舟唄」
昭和57(1982)年 細川たかし「北酒場」 大川栄策「さざんかの宿」


7位タイ:3曲 
昭和38(1963)年 舟木一夫「高校三年生」 田辺靖雄×九重佑三子「ヘイ・ポーラ」
昭和53(1978)年 渥美二郎「夢追い酒」 渡辺真知子「カモメが翔んだ日」
昭和60(1985)年 杉山清貴「ふたりの夏物語」 原田悠里「木曽路の女」
昭和61(1986)年 吉幾三「雪國」 瀬川瑛子「命くれない」
平成29(2017)年 純烈「愛でしばりたい」 丘みどり「佐渡の夕笛」


■昭和歌謡を積極的に取り上げて「紅白」を補完

 “昭和”の懐かしさを醸し出そうとするためか、「年忘れ」は曲の発売年を元号で表示している。これを西暦に直すと、1970年代や1980年代の曲が突出している。次に2020年の「紅白」全62曲(特別出演、企画含む)と「年忘れ」全89曲を年代別に分けて比較してみよう。

1960年代以前:紅白 5曲(8%)  年忘れ 14曲(15.7%)
1970年代:紅白 3曲(4.8%) 年忘れ 33曲(37.1%)
1980年代:紅白 4曲(6.5%) 年忘れ 18曲(20.2%)
1990年代:紅白 3曲(4.8%) 年忘れ 10曲(11.2%)
2000年代:紅白 11曲(11.7%) 年忘れ 8曲(9%)
2010年~2018年:紅白 10曲(16.1%) 年忘れ 5曲(5.6%)
2019年~2020年:紅白 26曲(41.9%) 年忘れ 1曲(1.1%)


 1980年代以前は「紅白」19.4%、「年忘れ」73%であり、2010年以降は「紅白」58.1%、「年忘れ」6.7%となる。最近の「紅白」では、昭和の歌を聞ける機会が減っている。裏を返せば、「年忘れ」は昭和の歌を積極的に取り上げて「紅白」を補完し、40代中盤以上のニーズを満たしている。そのため、安定的な視聴率を残しているのだろう。

 以前は「紅白」と「年忘れ」の掛け持ちも珍しくなかったが、2020年の両番組出演歌手は五木ひろし、郷ひろみ、山内惠介、純烈、三山ひろし、氷川きよし、水森かおり、坂本冬美、天童よしみ、石川さゆりの10組(特別企画で歌った山崎育三郎を含めれば11組)。公式サイトの「第71回NHK紅白歌合戦 出場歌手・曲順」のトップページに記載されていた歌手46組で割ると、全体の21.7%に収まった。

■“かぶり”の減少で増す希少価値

 被りが減少していることも、番組の希少価値を増している。「年忘れ」がさらに視聴率を上げるには、どんな手を打てばいいのだろうか。

 ヒントは、20時台終盤から21時台序盤に“懐かしの名場面を振り返る”と題してオンエアされた過去映像にある。その中で、紅白が1部から2部へ移行する間、ちょうどNHKニュースと被ったのは以下の5曲である【※歌手名、曲名、発売年】。

西城秀樹「YOUNG MAN(Y.M.C.A.)」 1979年
松田聖子「青い珊瑚礁」 1980年
寺尾聰「ルビーの指環」 1981年
中森明菜「DESIRE」 1986年
少年隊「仮面舞踏会」(20時台から21時台の跨ぎ) 1985年
 

 テレ東は、NHKから移ってきた視聴者をこれらの曲で繋ぎ止められると考えたのだろう。2020年の「年忘れ」は演歌系が約6割を占めた。この比率を減らして、1970年代や1980年代に活躍したポップス系の歌手の出演を増やせば、さらなる視聴率の上昇が見込めるのではないか。

 また、20年の松平健×香取慎吾「マツケンサンバⅡ」や和田アキ子×DAIGO「古い日記」のようなコラボレーション企画、西城秀樹や筒美京平、なかにし礼、中村泰士ら昭和歌謡を彩った偉人を偲ぶトリビュート特集なども視聴者の興味を惹くだろう。

 演歌枠を削りづらいなら、放送時間の延長を検討する価値もある。2021年の大晦日は「紅白」の40%台確保だけでなく、「年忘れ」が“大台”の10%に乗るかにも注視したい。

▽取材・文=岡野誠/ライター・芸能研究家 1978年生まれ。膨大なデータと綿密な取材によって〈田原俊彦とジャニーズ共演NG説〉〈当初は問題視されなかった「ビッグ発言」〉などを検証した著書「田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018」(青弓社)が話題に。

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