「がん」「アレルギー」「不妊」の急増は人類長寿化の裏返しか
20世紀は「寿命延長革命」の時代だった。日本はその先頭に立つ。1900年ごろの日本人の平均寿命は男性約42歳、女性は約44歳。平成時代の2000年にはそれぞれ約77歳、約84歳となった。およそ100年間で男性は35年、女性は40年寿命が延びた計算だ。日本人の1年あたりの平均寿命の伸びは1900年~2000年で男性0.35年、女性0.4年延びたことになる。
その勢いはいまも続く。2021年の日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳となり、2001年以降の1年あたりの平均寿命の伸びはそれぞれ男性約0.2歳、女性は0.15歳。2000年までに比べて加速が鈍化したものの、寿命延長は続いている。
それ以前はどうか? 二足歩行の人類の祖先である猿人の登場は約600万年前。当時の平均寿命は20~30年だった。つまり人類は600万年かけて約20年寿命を延長したが、直近100年間でその倍となる40年近く延ばしたわけだ。それは生物学的進化の結果なのか?
答えは「否」だ。最大の理由は私たちを取り巻く環境の整備だ。戦争、貧困、飢餓、不衛生の克服などが行われた。それを可能にしたのは医療の発達であり、医学をベースにした健康的な生活維持法の普及にある。ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師が言う。