著者のコラム一覧
細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

「新東宝スターレット」6期生のオーディションに中学3年生の沢村忠の姿が

公開日: 更新日:

 渦中にあって“経営陣にも組合側にもどちらにも与しない”という第3勢力が現れた。戦前の時代劇スター、大河内伝次郎とその一派である。長谷川一夫、山田五十鈴、原節子、高峰秀子らと「十人の旗の会」を結成し、百数十人の社員やスタッフで設立されたのが「新東宝」である。

 東宝常務だった佐生正三郎を初代社長に迎えた新東宝は、当初、争議によって製作機能が停止した東宝本社の配給で新しい作品を生み出す、いわば「製作専門の下請け会社」といった性格を帯びていたが、程なくして東宝が製作部門を再開すると、独立路線をとった佐生社長は追われるように社長の座を退いた。後任には、またしても小林一三の異母弟でプロボクシング帝国拳闘会(現・帝拳ボクシングジム)初代会長の田辺宗英が就任。おそらく、小林一三の意向にほかならず、東宝との合併を念頭に置いた人事だったと見ていい。

 しかし、4代目社長に迎えられた“興行界の梟雄”大蔵貢は、新東宝を事実上買収し、純文学路線から一転「安く、早く、面白く」「テスト1回、ハイ本番」などのスローガンを掲げた「エログロ路線」を志向。「早撮りの巨匠」の異名を取った渡辺邦男を呼び戻し、嵐寛寿郎主演「明治天皇と日露大戦争」(監督・渡辺邦男)は観客動員2000万人、配給収入約6億円という、当時としては空前絶後の大ヒットとなった。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  3. 3

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  4. 4

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  5. 5

    坂口健太郎に永野芽郁との「過去の交際」発覚…“好感度俳優”イメージダウン避けられず

  1. 6

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  2. 7

    板野友美からますます遠ざかる“野球選手の良妻”イメージ…豪華自宅とセレブ妻ぶり猛烈アピール

  3. 8

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景