著者のコラム一覧
立岩陽一郎ジャーナリスト

NPOメディア「InFact」編集長、大阪芸大短期大学部教授。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクなどを経て現職。日刊ゲンダイ本紙コラムを書籍化した「ファクトチェック・ニッポン 安倍政権の7年8カ月を風化させない真実」はじめ、「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」「トランプ王国の素顔」「ファクトチェックとは何か」(共著)「NHK 日本的メディアの内幕」など著書多数。毎日放送「よんチャンTV」に出演中。

ドキュメンタリー映画「ボストン市庁舎」が活写する公職者のあるべき姿

公開日: 更新日:

 Elected Officialsという言葉がある。選挙で選ばれた公職者のことだ。民主主義社会では、難関試験に通った秀才よりも選挙で選ばれた人間に大きな権限と重い責任が与えられる。それは、市民に政策を説明し理解を得られる人間が社会をリードすることが民主的な社会だと考えられるからだ。それが徹底されているのがアメリカだろう。今、映画「ボストン市庁舎」(写真)が各地で上映されている。フレデリック・ワイズマン監督がボストン市役所の業務に密着したドキュメンタリーだ。

 そこでは、市民との対話を重ねる市役所の職員の姿がナレーションなしで描かれている。財政担当の職員が市の財政状況を市民に説明する場や、施設の改築をどう進めるかを担当者と市民の代表とが語り合う場をカメラが追う。職員だけではない。当時の市長のマーティン・ウォルシュ氏が会議の席で職員に話す場や高齢者、帰還兵との対話の場にもカメラが入る。

 そのウォルシュ氏はカメラに向かって話さない。話す先は市民であり、市の職員だ。メディア向けの言葉もない。自身の子供時代に入院した経験や成人してのアルコール依存症の体験などを赤裸々に語り、市民と対話する。その徹底した双方向の姿勢が印象的だ。人種差別的な犯罪が懸念された際には、マイノリティー出身の職員を集めて、「あなたたちを守る」と話し人種差別を認めない覚悟を語る。

 これこそが選挙で選ばれた公職者だ。自治体の長のあるべき姿をそこに見る。

※コラムへの感想や意見は以下のアドレスへ。
 tateiwa@infact.press

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    「ばけばけ」好演で株を上げた北川景子と“結婚”で失速気味の「ブギウギ」趣里の明暗クッキリ

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    「戦隊ヒロイン」ゴジュウユニコーン役の今森茉耶 不倫騒動&未成年飲酒で人気シリーズ終了にミソ

  5. 5

    2度不倫の山本モナ 年商40億円社長と結婚&引退の次は…

  1. 6

    女子プロレス転向フワちゃんいきなり正念場か…関係者が懸念するタレント時代からの“負の行状”

  2. 7

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘

  3. 8

    学歴詐称問題の伊東市長より“東洋大生らしい”フワちゃんの意外な一面…ちゃんと卒業、3カ国語ペラペラ

  4. 9

    NHK大河「べらぼう」に最後まで東洲斎写楽が登場しないナゼ?

  5. 10

    松本人志を口火に永野芽郁にフワちゃん…“やらかし芸能人”続々復活の11月 3人の間で地上波復帰レース勃発の奇観

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    片山さつき財務相“苦しい”言い訳再び…「把握」しながら「失念」などありえない

  3. 3

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  4. 4

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  5. 5

    高市首相「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」どこへ? 中国、北朝鮮、ロシアからナメられっぱなしで早くもドン詰まり

  1. 6

    “文春砲”で不倫バレ柳裕也の中日残留に飛び交う憶測…巨人はソフトB有原まで逃しFA戦線いきなり2敗

  2. 7

    阪神・佐藤輝明の侍J選外は“緊急辞退”だった!「今オフメジャー説」に球界ザワつく

  3. 8

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  4. 9

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  5. 10

    古川琴音“旧ジャニ御用達”も当然の「驚異の女優IQの高さ」と共演者の魅力を最大限に引き出すプロ根性