歌手・由紀さおりさん 家族で食べたロールキャベツ「よその家とは違って、ルーが決め手」

公開日: 更新日:

「ほめたら努力しなくなる」と厳しかった母

 母の思い出の料理はロールキャベツです。春キャベツが出回る頃になると、よく作ってくれました。両親、兄と姉の5人分、1人2個ずつ10個くらいを大きな葉っぱを使って。まず葉っぱを湯がきます。それから芯のところを削る。具は豚のひき肉だったと思う。それにタマネギのみじん切りを加えてから水に浸したパン粉を入れて、よ~く練る。塩コショウで味を調える。それをキャベツで包んで楊枝で留め、コンソメスープにお醤油で味付けして煮汁でコトコトと鍋で煮る。煮汁からロールキャベツを引き上げておくところまでが下ごしらえです。

 母のロールキャベツがよそのと違うのはここからです。家族が「ただいま」と帰ってきたのを見計らって仕上げです。まずフライパンでバターを溶かし、ロールキャベツを並べて少しだけ焦げ目を作る。それをお皿に盛り付けたら、フライパンのバターに小麦粉を入れてとろみをつけ、鍋の煮汁をからめたルーを作って、ロールキャベツにかける。トマトソースやホワイトソースをかけるやり方もあるので、その代わりです。帰ってきてバターの焦げた匂いがして、これがまた食欲をそそるわけです。大きいのは兄、私には小さいのが振る舞われたかな(笑)。とにかく母のロールキャベツは絶品でした。

 私も春になって八百屋さんやスーパーでキャベツを見つけると、思い出して作ってみました。でも、母と同じ味にはならないのよ。それにあの頃みたいな大きな葉っぱはないし、しかも半分に切って売っていたりで、作ってみようとはなりませんね。

 母は堅実で厳しい人でしたね。私も姉もほめてもらったことはありませんでした。「今日はこんなに一生懸命やった」と言うと、「私がよかったと言ったら、2人とも努力しなくなるでしょ」とよく言われました。

 それから小さい時からいろんなことを教えてくれた人でした。横浜に移ってから「ひばり児童合唱団」で童謡を歌い始めるようになって、いろんなところに出かける機会がありました。青森の五所川原に行った時のことです。汽車の両側を見ると一面菜の花畑。母は「菜の花がじゅうたんみたいで奇麗ね。菜の花からは菜種油が取れるし、花が咲く前に積んで湯がいておひたしにすると、おいしいのよ」と。「おぼろ月夜」を歌うと母と見たあの風景をすぐに思い出します。そういう情景を実際に焼き付けておくのは大切なことだと思っていたんですね。

(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  3. 3

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  4. 4

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督

  5. 5

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  1. 6

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  2. 7

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  3. 8

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  4. 9

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  5. 10

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い