著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<103>ローマでも東京でも、街はどこでもいいねぇ。写真は光が創るもんだ

公開日: 更新日:

 この写真集のタイトル、『エローマ、モノクローマ』っていうのがいいだろ。ローマで撮った写真で1冊つくったんだよ(2008年刊写真集)。

 これは、ちょっと歩いて移動する途中だね。オレはね、ローマに行ったってコロッセオを撮っておこうっていうような気は全然ないの。街角を歩いて路地に入ったら、こうして猫ちゃんがいたりするんだね。で、それを撮るの。

カフェの椅子に座ったまま…

 これはさ、カフェで休んで、ずっと広場を眺めてたときのテーブルだけど、このテーブルがローマで一番印象に残ってたりするんだねぇ。そうしたら、広場におばあちゃんがやってくるわけ。普通なら近づいたりして撮るんだけど、カフェの椅子に座ったまま撮っちゃうわけ。ずっと眺めててシャッターを切る、近づかないでね。このおばあちゃん、教会かなんかの入口でお金をもらってるような人なんじゃないかって、それで、もう教会なんかも閉館になって、どこかに帰るところなんだって、勝手に想像したりしてさ。写真のいい悪いじゃなくて、ここはよかったなぁ。歩いてると、少女がいたり…。ローマでも東京でも、街はどこでもいいねぇ。

 オレの場合は、どこへ行ってもおんなじなんだよ(笑)。塔が墓標に見えちゃったりさ。そのあたりの出店で買った小さなピエタと男女二人が抱き合ってる像を買ってね、その後、家のバルコニーの丸テーブルに置いて撮ってたよ。そうやってローマが続いてたね。行ったら手ぶらじゃ帰らないんだよ(笑)。

 やっぱりねぇ、旅行へ行ったらそんときの写真、記念写真って言うとへんだけど、そんときの写真を撮らなきゃいけないねぇ。新婚旅行とか家族旅行とかに行って、評判の店でとんでもなくデコラティブなアイスクリームを持って撮るとかさぁ。そういうのって、歴史撮るよりぜんぜんいいじゃない。

光が荘厳さを創る

 その気になってると、へんな言いかただけど、いい写真が撮れるんだよ。ぽっと教会なんかに入ると、尼さんなんかがいるんだね。舞台装置がいいんだよ。これで、写真は光が創るもんだっていうことがわかるでしょ。光で、荘厳っていうかさ、そういうふうになるんだねぇ。神じゃないけど、光が荘厳さを創るっていうかねぇ。なんかいいよねぇ。モノクローマ、エローマだよ(笑)。

(構成=内田真由美)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    清原和博氏が巨人主催イベントに出演決定も…盟友・桑田真澄は球団と冷戦突入で「KK復活」は幻に

  2. 2

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  3. 3

    99年シーズン途中で極度の不振…典型的ゴマすりコーチとの闘争

  4. 4

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  5. 5

    日銀を脅し、税調を仕切り…タガが外れた経済対策21兆円は「ただのバラマキ」

  1. 6

    巨人今オフ大補強の本命はソフトB有原航平 オーナー「先発、外野手、クリーンアップ打てる外野手」発言の裏で虎視眈々

  2. 7

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  3. 8

    林芳正総務相「政治とカネ」問題で狭まる包囲網…地方議員複数が名前出しコメントの大ダメージ

  4. 9

    国分太一が「世界くらべてみたら」の収録現場で見せていた“暴君ぶり”と“セクハラ発言”の闇

  5. 10

    角界が懸念する史上初の「大関ゼロ危機」…安青錦の昇進にはかえって追い風に?