井筒和幸
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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

マツタケをドブの臭いに感じる若者もいるし、映画は通勤中にスマホで見るのが現状だ

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 最近の新作映画も味がなくて食えたもんじゃない。この10年で仕事柄、月に10本は洋邦を問わず映画館かDVD版で見てきたが、見事にロクなものがなかった。世界の映画人も気づいているはずだ。映画らしい画像の奥深さ、映画らしい音楽、映画らしい大胆不敵な話は一本もない。撮影技法も拙い。ドローンの画面は話の流れを壊してる。監督はカメラアングルを学んでない。思想が感じられない。ただ写している。アクション場面は10コマ刻みの見苦しい編集で、そこにはリアリティーも切迫感も喜びも憎しみも悲しみも出ていないのがほとんどだ。S・マックイーンの「ブリット」の、追う者と逃げる者の感情まで映るカーチェイス場面を超えるものがない。「ワイルド・スピード」はCG加工とスタント技術の発表会で他に何も見えない。人生相談のような小作品は興行のリスクを考えて貧しい製作予算で作るしかなく、作り手の発想も貧相なまま終わってる。貧しさと貧相が罪をなすりつけ合って空回りしてる。市場はネット配信に取って代わられ、映画館も四苦八苦だ。

 マツタケをドブの臭いに感じる若者もいるし、映画は通勤中にスマホで見るのが現状だ。邦画だけじゃない。世界中の映画に味わいがなくなり、「いやー参った」と思わせる作品はなくなった。あの無愛想な習近平やあの金正恩もたまには日本映画も見るだろう。ジブリのアニメでも眺めてるのか。そんなノンキな連中じゃないか。でも、「仁義なき戦い」とか「ゴッドファーザー」はひょっとして気休めにDVDで見てたりして。何にしろ、アジアの独裁者も気にかけるような、そんな新作、痛快作がない。世界を覚醒させるものが見たい。

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