著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

故・名プロデューサー佐藤剛さん 最後のサプライズと、ときに苛烈すぎる人生について

公開日: 更新日:

 今週の日曜日(25日)、先ごろ71歳で逝去した佐藤剛さんの告別式が営まれた。凄腕の音楽プロデューサーであり、すぐれた作家でもあった。

 大腸がんとの闘いは、相互フォローしていたツイッターで知っていた。だがこんなに早い旅立ちになるとは。亡くなった当日に届いた訃報には、葬儀は近親者のみでとあった。だが故人とゆかりの深い田中康夫さんのつよいお声がけに背中を押され、手を合わせに行ったぼくは、出棺のお手伝いまでさせていただいた。大きな波動を感じるひとときだった。これは運命だったといま思う。

 剛さん(とこれまで通り呼ばせていただく)の半世紀にわたる音楽人としての足跡は、じつに輝かしいものだ。杜の都の名門・仙台一高時代に映画や文学や音楽に感電。難関の慶應大学法学部に合格しながらも、心酔する川島雄三監督(『幕末太陽傳』)の影響で明治大学文学部演劇学科に進学、川島が所属した映画研究部に入部する。

 卒業後は音楽業界誌の営業・編集・執筆を経てシンコー・ミュージックへ。アーティストのマネージメントやプロデュースに開眼すると、シンコーから甲斐バンドと共に独立。29歳で事務所社長となる。甲斐バンド解散後は、新設した会社ファイブ・ディーでプロデュース活動を本格化。ロックバンドTHE BOOMと邂逅し、フロントマン宮沢和史の稀有な才能を覚醒させたり、小野リサやハナレグミといった音楽的かつ個性的なアーティストを世に送り出す。

 ファイブ・ディーでは、音楽よりはむしろ小説家や漫画家のエージェント、あるいは写真家、画家、イラストレーターの発掘やマネージメントをやりたかったという。実際、1988年にはマイケル・ジャクソンの自伝『ムーンウォーク』日本語版刊行に関わり、当時面識もなかった作家・田中康夫を邦訳担当に指名した。同書は初版10万部を売り切って増刷も重ねたのだから、剛さんは出版プロデュースの力量も確かだった。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    元フジテレビ長谷川豊アナが“おすぎ上納”告白で実名…佐々木恭子アナは災難か自業自得か

  2. 2

    中居正広は「地雷を踏んだ」のか…フジテレビに色濃く残る“上納体質”六本木『港会』の存在

  3. 3

    《フジが反転攻勢》《どうする文春!》中居正広問題の文春記事訂正に大はしゃぎの違和感…“直取材”対象はどこにいる

  4. 4

    「文春訂正」でフジテレビ大はしゃぎも…今田耕司、山里亮太、カンニング竹山ら“擁護”芸能人の行きつく先

  5. 5

    フジテレビ系の冬ドラマ「警察もの」2本はありえないお話しすぎてズッコケの連続

  1. 6

    東野幸治とハライチが春の番組改編で大ピンチ…松本人志、中居正広のスキャンダルでトバッチリ

  2. 7

    生島ヒロシが“一発アウト”なら「パーソナリティー一斉退場」の声も…“不適切画像”送信降板とTBSラジオの現状

  3. 8

    キムタクがガーシーの“アテンド美女”に手を付けなかったワケ…犬の散歩が日課で不倫とは無縁の日々

  4. 9

    フジテレビ騒動で蒸し返される…“早期退職アナ”佐藤里佳さん苦言《役員の好みで採用》が話題

  5. 10

    カンニング竹山がフジテレビ関与の疑惑を否定も…落語家・立川雲水が「後輩が女を20人集めて…」と暴露

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元フジテレビ長谷川豊アナが“おすぎ上納”告白で実名…佐々木恭子アナは災難か自業自得か

  2. 2

    中居正広は「地雷を踏んだ」のか…フジテレビに色濃く残る“上納体質”六本木『港会』の存在

  3. 3

    「文春訂正」でフジテレビ大はしゃぎも…今田耕司、山里亮太、カンニング竹山ら“擁護”芸能人の行きつく先

  4. 4

    魅惑のEカップ・田中みな実がまんまる“美バスト”をまたまた披露!

  5. 5

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  1. 6

    フジテレビ騒動で蒸し返される…“早期退職アナ”佐藤里佳さん苦言《役員の好みで採用》が話題

  2. 7

    “天皇”日枝久氏しか知らない「ジャニーズ圧力」「メリーの激昂電話」 フジテレビは今こそ全容解明を

  3. 8

    入社式の仰天舞台裏 コネと忖度が横行するフジの末期症状

  4. 9

    ひっそりと存在消された NHK“車上不倫”人気アナカップル

  5. 10

    《フジが反転攻勢》《どうする文春!》中居正広問題の文春記事訂正に大はしゃぎの違和感…“直取材”対象はどこにいる