著者のコラム一覧
桧山珠美コラムニスト

大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」に「今月のダラクシー賞」を長期連載中。

スポ根DNAを感じさせるTBS「下剋上球児」 半年のオーディションで選ばれた面々が素晴らしい

公開日: 更新日:

 15日スタートのTBS日曜劇場「下剋上球児」を見た。夏ドラマの話題をすべて持っていった感のある「VIVANT」の後で高校の弱小野球部の話とは。いささか地味過ぎると思ったが、「ドラマのTBS」をナメてはいけない。

「スクール☆ウォーズ」から39年、「ROOKIES」から15年。先人の名作を踏襲しつつ、イマドキの演出に新しさも見られ、「令和のスポ根」として、しっかりアップデートしていた。

 さらには、ただの「スポ根」と思っていたら、終盤には主役(鈴木亮平)やその妻(井川遥)に何やら秘密がありそうなミステリー要素も加わり、考察好き視聴者も取り込もうという意欲作だ。

 鈴木は高校教師・南雲脩司を演じる。南雲を監督に誘う野球部部長・山住香南子に黒木華。南雲の妻を井川遥、県下一強豪校の監督を松平健、孫を溺愛する大地主を小日向文世、生瀬勝久、小泉孝太郎らも。鈴木と黒木は過去に大河ドラマ「西郷どん」で西郷隆盛とその妻を演じた。見た目は地味でも、演技は確かな2人の共演は見ものだ。

 草野球チーム「越山ドーマーズ」のメンバーに元プロ野球選手の鳥谷敬演歌歌手の新浜レオンらバラエティーに富んだ顔ぶれも楽しい。

 特筆すべきは、半年ものオーディションをかけて選ばれた球児たち。事前番組でその様子をチラッと見たが、コロナで大会が中止になり、甲子園に行けずに夢破れた球児もいて「ドラマに出ることで母に恩返しをしたい」と熱く語っていた。

ジャニーズがいなくてスッキリ

 球児の中にはドラマを引っ張るメンバーもいて3年生・キャプテン日沖誠役の菅生新樹は「初恋の悪魔」でシリアルキラーを演じていた若手俳優で菅田将暉の弟。長谷川幹太役の財津優太郎は今週亡くなった財津一郎の孫だ。

 ジャニーズタレントは一人もいない。

 この手の学園ドラマには必ずといっていいほど数人紛れ込んでいたものだが。まさか、今を予知していたわけではないと思うが、半年もかけてオーディションで選んだことが幸いしたのかもしれない。

 翻って、秋ドラマに目を転じると、いかに多くのジャニーズがキャスティングされているかがよくわかる。これまで、どうしてこの人が主役? と疑問を持つようなキャスティングが多かった。

 それがドラマ離れを加速させた一因であるのも間違いない。これを機に、忖度キャスティングがなくなれば、風通しがよくなり、実力のある俳優にもチャンスが回り、質の高いドラマが多くなるのではと思う。

「下剋上球児」はドラマの在り方を改めさせる契機になる作品かもしれない。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志氏はパチプロ時代の正義感どこへ…兵庫県知事選を巡る公選法違反疑惑で“キワモノ”扱い

  2. 2

    タラレバ吉高の髪型人気で…“永野ヘア女子”急増の珍現象

  3. 3

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 4

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  5. 5

    《#兵庫県恥ずかしい》斎藤元彦知事を巡り地方議員らが出しゃばり…本人不在の"暴走"に県民うんざり

  1. 6

    シーズン中“2度目の現役ドラフト”実施に現実味…トライアウトは形骸化し今年限りで廃止案

  2. 7

    兵庫県・斎藤元彦知事を待つ12.25百条委…「パー券押し売り」疑惑と「情報漏洩」問題でいよいよ窮地に

  3. 8

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 9

    大量にスタッフ辞め…長渕剛「10万人富士山ライブ」の後始末

  5. 10

    立花孝志氏の立件あるか?兵庫県知事選での斎藤元彦氏応援は「公選法違反の恐れアリ」と総務相答弁