『1980 僕たちの光州事件』幸せな家族の視点から非常戒厳の残虐性を追求。軍隊はなぜ市民を殺したのか?

公開日: 更新日:

国民の分断はいつの時代でも、またどこの国でも起こりえる

 こうした国民の分断はトランプ政権下の米国を見ればわかるように、いつの時代でも、またどこの国でも起こりえる。現在の日本もしかり。兵庫県では斎藤元彦立花孝志コンビと百条委員会・第三者委員会が分断・対峙している。

 そもそも日本でも戦時中は憲兵隊や特高警察が戦争に反対する民主的知識人を痛めつけていた。一般市民もそうした勇気ある人々を「あいつはアカだ」と盲目的に嫌悪して当局に密告していた。本作でも学生たちは「アカ」として追及を受けている。皮肉な共通点である。

 本作では要所ごとに事態の進展を知らせるテロップが挿入される。

〈5月17日 光州〉
〈5月18日 戒厳軍 派遣部隊を増員〉
〈5月19日 デモ隊に解散の警告〉
〈5月20日 歪曲報道に怒った市民が放火〉
〈5月21日 戒厳軍 集団発砲〉
〈5月22~25日 五月解放光州〉
〈5月26日 戒厳軍 最終通告〉
〈5月27日 尚武忠正鎮圧作戦〉

 時々刻々と変わっていく情勢の先には悲劇の結末が待っていた。

 キム・ソンヨン神父は軍隊が学生らの衣服をはぎ取って殴り、体を銃剣で刺していたと証言。「彼らをおかしくしたのはいったい誰なのか。国民を殺せと命令した元凶は誰なのか」と嘆くのだ。

 本作で韓国近代史に関心を持った人は「1987、ある闘いの真実」を見てもらいたい。光州事件から7年。民主化運動の大きな転換点を描いた力作である。(配給:クロックワークス)

(文=森田健司)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  2. 2

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

  3. 3

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  4. 4

    朝ドラ「あんぱん」豪ちゃん“復活説”の根拠 視聴者の熱烈コールと過去の人気キャラ甦り実例

  5. 5

    “Snow Manの頭脳”阿部亮平は都立駒場高校から“独学”で上智大理工学部へ 気象予報士にも合格

  1. 6

    長嶋一茂が晒した「長嶋家タブー」の衝撃!ミスターとの“今生の別れ”、妹・三奈との根深い確執も赤裸々

  2. 7

    手ごたえのない演奏を救ったのは山下達郎 弱冠22歳の雄叫びだった

  3. 8

    パワハラ報道の橋本環奈"人気凋落"が春ドラマで鮮明に…一方で好感度上げたのは多部未華子

  4. 9

    いとうあさこだけでない「育ちの良さ」が隠せない50代女芸人…“実家が太い”“隠れ高学歴”の強者も

  5. 10

    貴乃花の次女・白河れい「事務所退所」…“親の力を借りない”妹と長男・花田優一の現在地

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  2. 2

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  3. 3

    長嶋一茂が晒した「長嶋家タブー」の衝撃!ミスターとの“今生の別れ”、妹・三奈との根深い確執も赤裸々

  4. 4

    “Snow Manの頭脳”阿部亮平は都立駒場高校から“独学”で上智大理工学部へ 気象予報士にも合格

  5. 5

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

  1. 6

    手ごたえのない演奏を救ったのは山下達郎 弱冠22歳の雄叫びだった

  2. 7

    長嶋茂雄さんは助っ人外国人のセックスの心配もしていた。「何なら紹介してやろうか?」とも

  3. 8

    父の死去で長嶋一茂は“天然キャラ”封印…KY発言に噛みつく「不謹慎警察」のエジキになる恐れ

  4. 9

    元横綱白鵬 退職決定で気になる「3つの疑問」…不可解な時期、憎き照ノ富士、親方衆も首を捻る今後

  5. 10

    「ルンバ」のアイロボット社に事業継続困難疑惑…代表執行役員社長が舞台裏を説明