俳優・山内圭哉さん 作家・中島らもの言葉と朝ドラ「あさが来た」出演
山内圭哉さん(俳優/53歳)
故・中島らも主宰の笑殺軍団リリパットアーミー出身で、朝ドラ「あさが来た」の番頭役で注目を集めた山内圭哉さん。今も舞台やドラマなどで大忙し。11月にはまつもと市民芸術館などで舞台「チェーホフを待ちながら」に出演する。
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リリパットアーミーの座長だった中島らもさんとの出会いはすごいことやったと思いますね。
僕は21、22歳の頃は自堕落な生活してまして。そんな時にサブカル好きの女友達に「(大阪のアカデミー児童劇団で)子役やってたんやし、らもさんが座長の劇団が初めてオーディションやるいうから受けてみたら。らもさんいう人、あんたに合うと思うで」と言われました。それでもう芝居なんかしたない思うてたけど、冷やかしで行ってみよかと。
そこでは適当なことやらされ、「明日から事務所においで」と言われて。当時は若木え芙(現わかぎゑふ)さんがらもさんのマネジャーでした。事務所には机が3つ4つ、奥にちゃぶ台、その上に原稿用紙と一升瓶が置いてあって、若木さんが「おっちゃん、今日、エッセー3本も書かなあかんねん。あんた、横でお付きし」と。「お付きて何したらええんですか」て聞いたら、「とにかく書かせたいねん。あんた、酒飲めるか。あんたも飲んでええからお酌してなんとか書かしい」言うんです。
僕がらもさんの向かいに座り、らもさんが書き出す。酒を注ぐ。そのうち書くのに疲れて「ふんどしとかけて」とか謎かけを振られる。「わかんないです」言うと、「しょうがないな」って。ほんで午後6時になったら飲みに出かける。
そんなことが続いて1週間後。飲んでるうちに終電がなくなって帰れへんから、らもさんの仕事部屋に泊めてもらうことになって、また2人で飲み出したんです。その時芝居する気もなくて、冷やかしのつもりだったのに、1週間もタダメシ食わせてもろて、酒も飲ましてもろて申し訳ない思ったので、そのことを正直に話したんです。そうしたらこう言われた。
「君はまだ20歳過ぎそこそこやろ。男は30からなんや。俺が最初に本を出したんも30や。30になったら変わってくるはずやから30まではやりたいことは何でもやれ。やりたいことがあったら迷わずやったらええ。何でも手伝うたる。別にやりたいことがないんやったら劇団にはおったらええがな。劇団におりながら好きなことしい」