俳優・山内圭哉さん 作家・中島らもの言葉と朝ドラ「あさが来た」出演

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フラフラしていた若者によくあんなこと言うてくれたなって

 その時はピンときてなくて「そんなんでいいんですか」言うてたんですけど、30過ぎていろんなことがあってキレイに食えるようになった。僕が32歳の時にらもさんは亡くなったけど、あの時ものすごいこと言うてもろたなと思いました。社会性もなく、フラフラしていた若者によくあんなこと言うてくれたなって。あれ言うてもらわへんかったら僕は今こんなことしてない。

 らもさんは灘中、灘高、大阪芸大を出たけど、ドロップアウトしまくった人ですからね。僕らみたいなもんに対してびっくりするくらい優しかったんやと思います。

 その頃、らもさんはアルコール依存症体験を書いた「今夜、すべてのバーで」(1991年)を出した後でした。いつも飲んではりました。1日1升くらい。うつもお持ちでうつからそうになった時期にあってずっと一緒におったんですけど、らもさんは寝ないでしゃべり続ける。そう状態の時は一人にしたらあかんから、劇団員がローテーションでらもさんの部屋に一緒に寝泊まりするようにして。

 こんなこともありました。その頃はバリの取材旅行から帰ってきた後でバリ・ヒンズーの考え方にすごく影響されていました。らもさん、寝ないから薬を飲まして、寝たなと思っていたら夜中にキュッキュッと変な音がして目が覚めた。目を開けると横にらもさんがいない。明かりが漏れててユニットバスのドアが開いているからのぞくと、全裸のらもさんが洗面の排水の金具をこすってる。「何してんですか」言うたら、バリには(民族音楽の)ガムラン・ジェゴクという竹でできた楽器があって「ジェゴクと同じ音がする。君、ギターを持ってきて弾いて一緒にラジカセで録音しなさい」って。夜中に録音したそのテープは今もどこかにあるはずです(笑)。

 20代前半。そんならもさんはじめ大阪のアンダーグラウンド、サブカルチャーとかの変わった人たちとどんどん出会っていくわけです。魑魅魍魎でまっとうな生き方をしてない人ばかりだけど、一緒にいて面白い。僕はまともな大人にならんでええんや、会社勤めなんかあかん、そんなんちゃう思いました。本当にすごい体験でしたね。

 劇団には7年在籍。らもさんは僕が辞める言うたら「ほんなら俺も辞めるわ」言うて僕の1年後くらいに劇団を辞めました。僕は辞めてかららもさんの事務所に3年いて、一緒にラジオ番組もやっていたので30歳くらいまではよく会っていました。らもさんは出す本が売れて文学賞の候補にもなり、それでも「鍼灸師のセックスは気持ちええやろな」みたいなことばっかり言うてるわけですよ。そんならもさんがカッコええわ思うてました。今はそういう人いないから若い人がかわいそうやなと思います。

 30歳を過ぎて、川下大洋さんと後藤ひろひとさんが活動していたパイパーいうナンセンスなことをやる演劇ユニットがあって誘われました。そのうち東京で仕事をする機会が増えていきました。

 朝ドラ「あさが来た」(2015年)は、その前の年、NHKの木曜時代劇「吉原裏同心」のプロデューサーに「どうしても山内さんに出てほしい」とオファーをいただいて出ました。それからすぐその方が大阪に異動になり、「今度朝ドラをやるんですけど、興味ないですか」と言っていただき、出演させてもらいました。

 ヒロインの波瑠さんが嫁ぐ豪商「加野屋」の大番頭の役です。脚本の大森美香さんは僕の芝居をよく見に来られていて割と当て書き的なとこもありましたね。最初は「でかい仕事や」とは思ってませんでしたが、ええ役やし、周りからは「割と出番が多いですね」言われ、あれよあれよ。視聴率もよくて。ほんまこんなとこに来るつもりなかったんやけどなというのが正直な感想です。あれはでかかった。

ドラマを見た人が役柄と僕を混同して!?

 だって普通に街で声をかけられるんです。そして、役柄と僕を混同してはる。放送中に池袋の劇場で舞台に出ていて、終わってから大衆酒場で飲んでた時です。「あさが来た」はその頃、加野屋が銀行業に乗り出す話をやっていて、横にいたサラリーマンが「やっぱり銀行は嫌ですか」って。こっちはなんのこっちゃで。撮影はかなり前だし、オンエアとつながらない。「えっ? 銀行ですか」言うたら、「つらいですよね。会社の形態が変わっていくのは」と同情してはる。僕は「何を言うてはるんやろ」思てるから「はぁ、はぁ」と適当に相づちを打って(笑)。

 大阪の大衆食堂でご飯を食べている時も。店のおばちゃんが「あんた、はよ、友近抱きいや」って。友近の役と僕の役はいい関係になりそでならない設定やったんで(笑)。

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