小林聡美のGP帯連ドラ単独初主演作 アイドルには出せない“味”の虜に

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 90年代から“ほぼジャニーズ劇場”だった土9が、2000年代に入って“J頼み”からの脱出を模索していたような時期。そんな中でも、この企画は違和感があった。でも、せんべいの粉がちらばらないように“吸いながら”食べる小林聡美を見て「アイドル俳優には絶対出せない味」を感じ、虜(とりこ)になったのは僕だけではなかった。

 脚本を担当した木皿泉は向田邦子賞を受賞、多くのドラマ好きの“フェイバリット”となり、今も愛され続けている。

 ヒューマンコメディーのくくりに入るんだろうし、今ならシスターフッドなんてのもハマるかもしれないけど、そんなキャッチーな短い言葉で表したくない独特の世界。共感や笑いや感動の押し売りはなく、大きな事件はなくても(そりゃ同僚の横領は大事件だけど)、日常を丁寧に紡いでいく。生きづらさを押し出すわけでも“繊細さん”を礼賛するわけでもなくて、ただハピネス三茶とその周辺の人物が、いそうでいない、いなさそうでいそうな絶妙なキャラとして描かれる。そして僕らは“人間は怖くも悲しくも面白い”ってことに気づかされるのだ。

 そんなドラマを作ってみたいと思う制作者は、今もきっといる。この秋始まった「ぼくたちん家」には、その志をほんの少し感じる。言いたいことは山ほどあるけど、それは別の機会に。

(テレビコラムニスト・亀井徳明)

【連載】あの頃、テレビドラマは熱かった

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