萩本欽一〈58〉細川たかしの人生を変えた欽ちゃんの一言 「北酒場」「矢切の渡し」2年連続レコ大の裏側
「そういえばあいつにお礼を言われたことない(笑)」
増田「細川さんは何と?」
萩本「『決めました。社長に言ってきます』って。本当に地方回りをやめて、2曲目に行ったんだよ」
増田「そこで次の勝負を始めた」
萩本「そうしたら『矢切の渡し』で、またレコード大賞」
増田「2年連続」
萩本「そう。まあ、それでいうと俺、お礼言われたことないんだけどな、あいつに(笑)」
増田「もし慣例どおり地方を回っていたら、2年連続はありえなかったでしょうね」
萩本「そうなの。『北酒場』が当たったら仕事がバンバン入ってきたんだって。それを全部断って、次の歌に行った」
増田「相当な決断ですよね。せっかく仕事が殺到しているのに」
萩本「だから面白いんですよ。いいときに、そのいいものを手放せるかどうか」
増田「『北酒場』自体も、萩本さんの番組からヒットしていった歌ですよね」
萩本「そう。欽どこ(欽ちゃんのどこまでやるの!=テレビ朝日系列)でね。最初はね、笑いだけじゃなくて歌をやって、そこから何か考えようっていうんで歌を入れたの。それで『明るい演歌ない?』って聞いたの」
増田「従来の演歌とは違うものを」
萩本「そう。明るいやつ。それで出てきたのが『北酒場』だったの」
増田「それが日本中で歌われる大ヒットになった」
萩本「だからわかんないでしょう。何が当たるかなんて。最初から『これをレコード大賞にしよう』なんて誰も思ってないんだから」
(つづく=火・木曜公開)
▽はぎもと・きんいち 1941年、東京都生まれ。高校卒業後、浅草での修行を経て、66年にコント55号を結成。故・坂上二郎さんとのコンビで一世を風靡した。その後、タレント、司会者としてテレビ界を席巻し、80年代には週3本の冠番組の視聴率がすべて30%を超え、「視聴率100%男」の異名をとった。社会人野球「茨城ゴールデンゴールズ」の初代監督、2015年には73歳で駒澤大学仏教学部に入学するなど挑戦を続け、25年10月にスタートしたBS日テレ「9階のハギモトさん!」は今年4月からSEASON3に突入した。
▽ますだ・としなり 1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。



















