著者のコラム一覧
天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

近年最も注意している2つの耐性菌「MRSA」と「VRE」

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 傷口での院内感染を引き起こす原因の100%近くがMRSAといわれていて、感染すれば確実に創部感染に拡大します。閉じたはずの傷口が開いてしまって膿を持ち、敗血症を起こして3分の1が亡くなってしまうほど深刻な感染症です。心臓外科領域でも過去に数多くの施設で悲惨なアウトブレークを経験してきました。

 VREは、MRSAの治療に使われる特効薬である抗生物質バンコマイシンに対して耐性を持つ腸球菌です。バンコマイシンだけでなく、現在、細菌感染症の治療に使われているほぼすべての抗生物質が効かないので、感染症を起こすと命取りになる危険が高いといえます。

 腸球菌は、腸や生殖器に常在していて、ほとんどすべての人が持っています。こちらも通常は無害ですが、抵抗力が落ちている人が感染すると、腎盂腎炎、腹膜炎、敗血症、心内膜炎などを起こし、本来の特効薬であるバンコマイシンが効かないので重篤化して命を落とす可能性が高いのです。

■院内感染が拡大してしまうと命取りに


 MRSAもVREも、症状が表れていない保菌者は少なくありません。特にVREは排泄物から伝染するのでMRSAの40倍もうつりやすく、院内感染を起こしやすいのです。

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