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佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

誤った情報を信じてせっかくの人生を無駄にしないで欲しい

公開日: 更新日:

 3年前に大腸がん手術を受けたRさん(60歳・男性)のお話です。お会いした時、顔は痩せて腕も細くなっていて、上腹部は異常に膨らみ、皮膚には静脈が浮き出ていました。「あまり食べられないんです」と切り出した後、休み休み呼吸を整えるようにしてこう話されました。

「3年前、大腸のがんは手術で取れたのですが、この時すでに肝臓に転移があったのです。この転移したがんは、ほかの病院で直接針を刺して焼くラジオ波の治療をしてもらいました。でも、繰り返し治療したのですがだんだん転移の数が増え、大きくなって、担当医から『もうこのラジオ波治療は無理』と言われました。その後6カ月間は何も治療はせず、ここ3カ月はお腹が張って、苦しくて食べられなくなってきました」

 私は「ラジオ波をやってくれた担当医は、他の病院を紹介するとか、抗がん剤治療を勧めなかったのですか?」とたずねました。するとRさんは「担当医はラジオ波治療が専門で、他の治療はしないと聞きました」と言います。

 その担当医は、患者の体全体のことを考えたらがんの塊を焼くだけでは済まないことは分かっているだろうに、自分の専門のことだけをやっていればよいと思っているのか。Rさんの話を聞いていて、私はだんだん腹立たしくなってきました。 さらにRさんは、「抗がん剤は効かないという医師の本を読んで、抗がん剤治療は受けないことにしました」と言われるのです。

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