五木寛之 流されゆく日々

1932年福岡県生まれ。早稲田大学文学部ロシア文学科中退。66年「さらばモスクワ愚連隊」で小説現代新人賞、67年「蒼ざめた馬を見よ」で第56回直木賞。76年「青春の門 筑豊篇」ほかで吉川英治文学賞を受賞。2002年には菊池寛賞、10年NHK放送文化賞、毎日出版文化賞特別賞を受賞。本紙連載「流されゆく日々」は16年9月5日に連載10000回を迎え、ギネス記録を更新中。小説以外にも幅広い批評活動を続ける。代表作に「風に吹かれて」「戒厳令の夜」「風の王国」「大河の一滴」「TARIKI」「親鸞」(三部作)など。最新作に「新 青春の門 第九部 漂流篇」などがある。

五木寛之氏【特別寄稿】 私たちは知りたい

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 中沢新一さんが週刊誌に連載している『アースダイバー』を読むと、「目からウロコ」の衝撃を受けることがしばしばある。

 歴史とかいう大袈裟なものでなく、いま私たちが直面している日々の現実を、そんな視線で透視することはできないものなのだろうか。

 現代の世界情勢は、何がどうなっているのやら見当がつかない。歴史的法則や地政学的な分析では、とても解明できるとは思えないのだ。応仁の乱が単純に感じられるくらいに偽計と駆け引きにみちた現実が目の前にある。

 謀略とか陰謀とかいった言葉は、つねに冷笑的に受けとられる場合が多い。しかしベトナム戦争、イラク進攻の例を見るまでもなく、戦争の口火はほとんどフレームアップから始まる。シベリア出兵にしても、満州事変にしても、綿密に計画され準備された戦略的工作から口火が切られた。孫子を引くまでもなく、政治も戦争も、大義名分の背後には必ず隠された真実があるのだ。「不都合な真実」というキャッチフレーズさえも、そうだった。

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