牧野伊三夫
著者のコラム一覧
牧野伊三夫画家

1964年生まれ。画家。美術同人誌「四月と十月」同人。著書に「かぼちゃを塩で煮る」(幻冬舎)、「僕は、太陽をのむ」(港の人)ほか。北九州市情報誌「雲のうえ」、飛騨産業広報誌「飛騨」編集委員。

津軽海峡<1> 年明けの八戸で飲んだ「ひや酒」にのまれ…

公開日: 更新日:

 年明け早々に、北海道への出張があって、八戸から苫小牧までフェリーで海を渡ることにする。八戸港のある本八戸駅のそばに、行ってみたい酒場が2つあった。1つは、昭和の面影を残す「宝来食堂」。もう1軒は、「ばんや」という老舗の居酒屋。フェリーの乗船時刻は夜9時で、本八戸に到着したのは午後3時すぎで、はしごしてたっぷり、5時間ばかり飲むつもりだった。遅れて仕事仲間の佐野由佳さんが来ることになっていた。

 町を見物しながら、宝来食堂までのんびり歩いていく。途中のたばこ屋で宝来食堂の名を告げると、店の主人の顔がゆるんで笑い顔になった。暖簾を見つけ、ガラガラと引き戸を開ける。すでに常連客たちが一升瓶を置いてコップ酒を飲んでいた。石油ストーブに赤い火が燃え、厨房から人なつこい感じのおばあさんが出てくる。その懐かしい雰囲気に僕は涙しそうになる。在来線の列車の顔面には雪の塊がへばりついていた。ああ、寒い、寒い、と熱燗を注文する。ところが、おばあさんの顔が急に曇り、「うちはね、熱燗ないよ。食堂だからね、そんな手間かかることしないんだよ」と言う。常連たちがいっせいにこちらを振り向くので、僕はひるんだ。

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