牧野伊三夫
著者のコラム一覧
牧野伊三夫画家

1964年生まれ。画家。美術同人誌「四月と十月」同人。著書に「かぼちゃを塩で煮る」(幻冬舎)、「僕は、太陽をのむ」(港の人)ほか。北九州市情報誌「雲のうえ」、飛騨産業広報誌「飛騨」編集委員。

とげぬき地蔵にお願いして「名もない店」に入れた幸運

公開日: 更新日:

 先日、友人2人から誘われて巣鴨へ遊びに行った。ところがこの日は大型連休明けの日で、ほとんどの店が臨時休業していて、まるで冬の海水浴場のように閑散としていた。いつもは並ばないと拝めない「とげぬき地蔵」の前にも人がいないのである。そんななか、稲荷湯だけはやっていた。瓦屋根と板塀のある昔の趣を残す渋い銭湯だ。

 しかし、問題は湯上がりにビールを飲む酒場である。酒場らしい酒場もないなと思いながら稲荷湯まで歩いていると、店先に「焼き鳥」と書かれた赤ちょうちんをかけている小さな店に出合った。のぞいてみると、なかなかよさそうな雰囲気である。

「風呂へ行ったあと来たいんですが……」

「はいよ。席とっとくよ」

 よく見ると看板もない店だったが、店の人の、そのそっけない言い方に、ひそかに期待が高まる。こちらの名前も電話番号も聞かない。経験上、こんな店はいい店である確率が高いのだ。稲荷湯から上がって行ってみると、地元の常連らしきお客が数名、ほっこりとした表情でうまそうに酒を飲んでいて、ちゃんと席もとっておいてくれた。僕らが席に着くとその客たちが、「お風呂、ずいぶんゆっくりだったね」と一声かけてきた。きっと女将さんと僕らのことをうわさしていたのだろう。

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