棋士・木村一基王位「中高年の星」が明かす限界突破の手筋
百折不撓――。20代がピークとされる将棋界で、昨年46歳3カ月にして初タイトル「王位」を手にした「中年の星」の座右の銘である。その言葉通り、挑戦権を獲得するだけでも至難のタイトル戦にこれまで6度挑戦し、すべてはね返されながら、諦めなかった。そして7度目で成し遂げた。46年ぶりに史上最年長記録を塗り替え、さらに9歳も更新させたのである。快挙達成までの長いトンネル、どん底とそこでの試行錯誤、そして戦略を聞いた。
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――あの激闘の7番勝負を4勝3敗で制したとき、「もうタイトル戦は縁がないと思っていた」と述懐されていました。
ええ。40歳を過ぎて伸びがなくなり、現状維持すら難しく、ただ座り続けるだけでもつらくなっていましたから。棋士はピークが25歳くらいで、30歳くらいまで維持できても少しずつ棋力が落ち始め、40を過ぎるとがくんと落ちると先人たちも言っています。今はAIの登場などによってプラス10歳くらいでしょうけど、年齢を重ねると5回でも6回でも候補手を確認してから指していたのが、2回や3回程度になってしまい、結果的にミスにもつながっていくと中原名人がおっしゃった通りだと思っています。