谷口源太郎氏 東京大会で“五輪は不要”の声が広がればいい

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 本番まで約8カ月となった2020年東京五輪。膨れ上がる開催費用、暑さ対策、マラソン競歩の札幌移転など迷走が続いている。東京大会は「五輪」という祭典の断末魔を世界にまざまざと見せつけることになるのではないか――。近著「オリンピックの終わりの始まり」(コモンズ)で「五輪は要らない」と言い切るスポーツジャーナリスト・谷口源太郎さんに話を聞いた。

  ◇   ◇   ◇

 ――著書は五輪の暗黒史ともいえるものです。

 初めて五輪を現地取材したのが、1984年のロサンゼルス大会でした。五輪は「平和の祭典」として国際協調が金科玉条とされてきましたが、東西冷戦の影響で米国をはじめとする西側諸国が1980年のモスクワ大会をボイコット。その時点で平和の祭典が終焉し、84年のロス五輪でIOC(国際オリンピック委員会)主導の商業主義が露骨になっていきました。こうした五輪の質の変化と東京五輪開催を巡る問題が重なって、いったい誰のための何のための五輪なのかと思い、一冊の本にまとめました。

 ――平和の祭典に政治問題が持ち込まれた後、金儲けに変わっていったのですね。

 企業にとってスポーツは、自社のイメージアップを図る広報戦略や自社の商品を売るための販促。企業スポーツが社会で評価されることによる社員の士気高揚といった意味もあります。企業が一石何鳥も狙ってスポーツに資金を投入した結果、ショーアップされたロス大会が莫大な利益を生み出す先例となりました。それ以来、IOCが主体的に五輪ビジネスを展開し始め、今に至ります。

 ――日本もその影響をもろに受けました。

 例えば、98年の長野冬季五輪です。当時、西武グループのオーナーだった堤義明氏(元JOC会長)が、IOC会長から五輪博物館建設への2000万ドルの寄付を頼まれたことと引き換えに、招致を実現させたといいます。堤氏としては五輪を招致すれば、長野にスキー場や新幹線などのインフラを整備する理由ができる。五輪とスポーツレジャービジネスを紐づけたのです。

 ――分かりやすいビジネスモデルですね。

 五輪の商業主義化に歯止めをかけようと、五輪の簡素化を目指した良識派のIOC会長もいましたが、2013年に弁護士で元フェンシング西独代表のトーマス・バッハ氏が会長に就任して以来、規制緩和と新自由主義的な考え方に拍車がかかりました。彼の念頭にあるのは、五輪をいかにして持続させるかということです。東京五輪の次の夏季大会は、24年パリ、28年ロスに決まっていますが、招致に手を挙げる国が減っているのが現実。大会を続けるために何でもやろうというバッハ会長の方針に基づいて、14年に「オリンピック・アジェンダ2020」という改革案がまとめられました。

 ――どんな改革でしょうか。

 改革案40項目のうち重要なポイントは、複数都市開催を容認したことです。五輪の持続可能性を追求する中で、一つの都市に大会開催を負担させ続けると、どの国も招致に手を挙げなくなってしまう。だから、事情があれば、競技も会場も分散してもいい、よほどのときには海外で開催してもいいと認めたのです。「アジェンダ2020」に基づいた東京五輪は、今後の五輪のあり方を占う意味で非常に重要な大会に位置付けられています。

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