コロナ禍で非正規26万人減…“ブラックユニオン”搾取の実態

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 新型コロナウイルスの感染対策で営業を自粛していた小売店や飲食店などが6月に入って再開しているが、非正規社員の間では不信感も広がる。会社の指示で休んだのに、休業手当がなぜ出ないのか、と。そんな立場の弱いアルバイトや派遣社員の“駆け込み寺”が、個人で加盟できる合同労組ユニオンだ。実は玉石混交で、ブラックユニオンも少なくないという。

 ◇  ◇  ◇

 40歳の男性は2年前から精密機器工場で派遣社員として働く。週休2日で手取りは20万円ほど。一人暮らしでぜいたくをしなければ、生活は何とかできた。それが新型コロナの拡大とともに、2月から仕事が減り、4月になると上司の指示で「休んでくれるかな」と自宅待機に。トドメを刺されたのが、派遣会社からの連絡だ。

「契約を更新しません。5月末で終わりです」

 2カ月ごとの契約更新を繰り返していて、漠然と今後も働けると思い続けていたが、どん底に突き落とされた。会社に休業手当を求めたが、担当者には「働いていないので賃金はない」と突き返された。男性は、あるユニオンに頼ったそうだが、まだ朗報は届いていないという。

 総務省の3月の「労働力調査」によると、非正規労働者は前年同月比26万人減っている。比較可能な2014年1月以降最大の減少だ。

 男性のようなケースが報じられることも多く、5月31日付の朝日新聞は「個人加盟の労組、今こそ頼り」を掲載。スポーツジム大手コナミで働くアルバイト女性インストラクターがユニオンに相談した結果、手当を拒否していた会社が一転、手当を出す方向に転換したと報じている。

 労働組合は約2万4000あり、多くは大企業の社員向けにつくられた企業別組合。厚労省の調査では、パートなど非正規社員には加入資格がないとする組合が6割に上る。そこで、冒頭の男性のような非正規をサポートするのが、個人で加入できる各地のユニオンで、全国に約300あるとされる。

 朝日のケースはよかったが、中には受け皿のユニオンがブラックなこともあるという。どういうことか。「ブラックユニオン」の著者で、ブラック企業アナリストの新田龍氏が言う。

「派遣切りされてユニオンに駆け込む人は、休業手当だけでなく、復職して雇用を維持することも大きな目的です。ところが、ブラックユニオンはそれを無視して、裏で交渉相手企業と取引することがあります。その取引材料が、派遣切りされた人の退職です」

街宣での人件費や経費の名目でピンハネ

 休業手当と復職が願いなのに、退職が交渉材料になるとは……?

「ブラックユニオンが有利に交渉を行うための手段が、企業周辺での街宣活動やビラまきなどのネガティブキャンペーンです。企業規模を問わず、企業としては痛手。企業に揺さぶりをかけつつ、派遣切りされた人の退職を交渉材料に持ち掛けるのです。企業が『和解金で街宣が止まるなら』と少々割高な金額を受け入れるケースは珍しくありません。そこでブラックユニオンは、相談者を無理やり説き伏せて退職に追い込み、和解金獲得をもくろむのです。相談者には休業手当の一部などわずかな金額を渡すだけでお茶を濁す。ブラックユニオンでは、相談者を金づるとして食い物にする“貧困ビジネス”がまかり通っているのです」(新田氏)

 ユニオンに相談するメリットの1つ目は、個人ではなく、団体で交渉できること。それが街宣活動やビラなどのネガティブキャンペーンだ。そのネガティブ情報が公然と拡散されると、相談者の中では被害者の報復感情が満たされる。それが2つ目のメリットで、3つ目は労働争議に慣れた弁護士を紹介してもらえる点だという。

 労組をつくって会社と交渉する権利(団体交渉権、争議権、団結権)は、憲法が保障する労働3権だ。

 一人では弱いから、ユニオンに相談して団交するのは理にかなっている。そのユニオンが誠意あるホワイトならいいが、退職をエサにした和解金を目当てにするようなブラックではたまらないだろう。あるユニオンに加入して派遣切りされた企業と闘った30代男性が言う。

「ユニオンの団交によって得られた和解金は、組合員の口座ではなく、ユニオンの口座に振り込まれ、まず弁護士費用が差し引かれます。そこから分配で和解金を受け取りましたが、団交や街宣での人件費や経費の名目で拠出金を要求された。その分を支払ったので、手元に残った金額は本来得られたはずの休業手当などの半分くらいだったと思います」

「拠出金」は、和解金から弁護士費用を差し引いた金額の一定割合をユニオンがピンハネする。その割合はホワイトでも10%で、ブラックだと20~25%に上るという。

 ユニオンの収入は、新規加入時の「加入金」と毎月の「組合費」が一つの柱で、もう一つの柱が「拠出金」だ。あるブラックユニオンの決算報告書によると、1年間の収入に対する「拠出金」の割合は8割近い。「拠出金」依存が明らかだ。組合費が乏しいユニオンほどブラックな手法にならざるを得ないのか。

■ホワイトを見極める職員の人柄と規約の数値

 会社を追い出されて、ブラックユニオンに搾取された揚げ句、退職のピンチではシャレにならない。ホワイトユニオンを見分けるすべはないのだろうか。

「ユニオンは、ホワイトもブラックも無料相談会を行っています。1回の相談で決めるのではなく、いくつか掛け持ちしながら、相手方の様子を見るのが無難です。特にメンバーの人柄をじっくりと。ブラックなユニオンは、社会性のないメンバーが専従職員だったり、大して就労経験がなかったりします。役員や労働相談担当者に社会性のある穏やかな人をおいていれば、企業とは話し合いで解決できる可能性が高い。時間があれば、ユニオン主催のイベントや定期大会に参加するのも、ブラックとの見極めには大切です」(新田氏)

 もし規約をチェックできるようなら、拠出金は重要項目だ。和解金の10%を超える金額を求めるようなら、避けるのが賢明だろう。

 説明を求めて答えがあいまいだったり、はぐらかしたりする場合も要注意か。

【写真】初の「東京アラート」発動で街の何が変わったの?

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