和田堀公園の釣り堀は創業70年 「ジョーズ」のハリボテが
昭和の時代、釣りは今よりもっと身近な娯楽だった。その頃の雰囲気を醸し出す釣り堀が、杉並区の和田堀公園にある。
建物の外壁に張り巡らされた赤い角材が目印の「つり堀 武蔵野園」は、入ってすぐにビニールハウスの食事処、その奥に釣り堀がある。料金はエサと竿付きで大人30分500円から。竿は糸と浮きが付いているだけの竹竿だ。
なぜかジョーズのハリボテが水面から顔を出している釣り堀に先客は3人。見た目40代から60代。竹竿じゃないところを見ると常連か。平日の昼に釣りとはのんきなご身分だ(筆者もだが)。
さて、こちらもエサを針につけ、ポチャンと水面に投じる。水は濁って魚影は全く見えない。1分経過、3分経過……浮きはピクリともしない。5分して引き上げるとエサはすっかりなくなっていた。食われたのか? 溶けたのか? エサを付けて再チャレンジ――しかし、1時間繰り返しても釣果はゼロ。先客3人も同じだ。魚、いるの?
あきらめてビニールハウスの食事処で昼飯。オムライスが意外とおいしい。会計して取材を申し込むと、赤い帽子姿のご主人・青木大輔さん(54)が快く対応してくれた。
客はヘラブナ狙いの玄人から親子連れに変化
創業は昭和25年。同地でボート場やプールをやっていた祖父が他人から買い取り始めたそう。青木さんで3代目。一度は大手証券会社に勤めたが、3年で辞め、釣り堀を手伝うように。
「祖父が病気で倒れましてね。小さい頃から後を継いでくれと言われていたので。おじいちゃん孝行ですよ」
子どもの頃から釣り堀の2階で寝起きしてきた青木さん。昭和の釣り客についてこう語る。
「玄人が多かったですね。ヘラブナもやってましたから。だけどそういうお客さんも少しずつ減っていき、平成の中頃にはヘラブナもやめてしまいました。7、8年前につり堀自体も半分つぶし、その上にビニールハウスの食堂を自分たちで手作り。食事しながら子どもが釣りしているのを見られるからと、土日は親子連れで結構賑わいますよ」
時代の流れを見ながら、試行錯誤しつつ経営を続ける青木さん。それでも「下手にキレイにせず、昭和の雰囲気を残し続けたいですね。古ぼけている方が落ち着くし、こういう場所がまだ東京に残っていてもいいでしょう」という。
ちなみに魚は寒いと活動が落ちるだけで、ちゃんといるそうだからご安心を。あと、ジョーズのハリボテは映画のロケで使ったものをもらったそうだ。
(しばたゆう)